ノーベル賞級の発明をしても評価されない
こんなことではイノベーションなど起こせるはずはありませんが、経営陣がいくら𠮟咤しても社員を踊らせることはできません。その話を真に受けてリスクをとった先輩社員が、失敗の全責任を負わされて左遷され、飼い殺し同然に扱われている姿をみんな見ているからです。
とはいえ、新商品や新サービスがなければ会社は壊死(えし)してしまいます。だとしたら、残された方法はひとつしかありません。それが「イノベーションの外注」です。
じつはこれは、日本的雇用の会社にとってきわめて合理的な戦略です。
年功序列の会社では、ノーベル賞級の発明をしてもボーナスが数百万円増えるだけです。その代わり失敗は定年まで「終身」でついてまわるのですから、まともな知能の持ち主であればリスキーな研究開発なんてやろうとは思いません。かといって成果報酬で一部の社員に何千万円も給料を払うと、日本の会社(イエ)がなによりも大事にしている「社員の和」が壊れてしまいます。
しかしサラリーマンは、自分たちの小さなムラ社会のことしか気にしませんから、外部のベンチャー企業を買収して、20代の若者に何億円、何十億円払ったとしても「和」は壊れません。日本の大企業は構造上、リスクはすべて外部の人間にとってもらって、そのおこぼれを拾って生きていくしかないようにできているのです。
そしてじつは、日本の賢い若者たちはすでにこのことに気づいています。