物理的距離では測れない孤独感という闇
ある独身男性が都内からコロナ移住をして、1年もしないうちに都内にカムバックした。ありていにいって、どうやら「寂しかった」ようである。
「生活コストや、人ごみの少なさを鑑みて、移住にはメリットだらけと思い決断しました。
でも、移住先の地域コミュニティになかなか馴染めなかったですね。集まりなどに顔を出せば皆よくしてくれるけど、まわりはほぼ全員家族と暮らしているからか、独身の自分は一緒にいてもどこか居たたまれない気持ちになりました。
どうせ都内にいても友人とは自粛で会えなかったし、オンラインですぐつながれるから移住しても問題ないと考えてたんですが、移住先で孤独を感じると、自分の家族や友人たちとの物理的距離が一気に寂しく感じられて。『気軽に会える距離にいるけど会わない』と『最初から気軽に会えない距離にいる』には大きな差があると知りました」(38歳・印刷会社勤務・男性)
2020年のある調査によると、約3割の人がテレワーク時に「自分は孤立している」と感じていたそうだ。コロナ禍、及びまん延防止のために打ち出された種々の対策は、ともすれば人同士の孤立を深める方向に働く。もともと誰もが孤立を感じやすくなっている環境下へもってきて、移住でさらに孤立を感じたとなれば、移住を取りやめてしまうほどの寂しさが起こりうるらしい。
反ワクチンを掲げるある地方移住者は、「都会にまん延するコロナ対策の同調圧力が嫌」でコロナ移住を決めた。移住先でも反ワクチン掲げて発信するので地元住民との対立も見られるが、その地域にも志を同じくする人は当然いて、その人らと仲良く楽しく、そして「のんびり」過ごしているようである。
都会から離れて刺激のない生活でエネルギーを持て余しているのか。意見発信の熱量が上がり、地元住民と対立している様子を見ると、はたして本当に「のんびり」なのかが疑問に思える。だが、本人が「移住して正解だった」と断言しているのだから、これもおそらく移住の成功例である。