「ひどく傷つけられた」

当時、2人を含め入居者たちは日中、グループホームの隣にある恵の通所施設を利用。後に取材で分かったことだが、元社員らによると、この通所施設では「お仕置き部屋」と呼ぶスペースがあり、女性の所長がそこで利用者に暴行を加えたり、暴言を吐いたりすることが頻繁にあったという。

昇真さんと朋晃さんはそうした環境に置かれていた。でも、発語がほとんどない2人はそれをほかの人に伝えることができない。スタッフは2人の行動障害が激しくなったことについて「原因は分からない」と話していた。

西角さんはこう憤る。「そういうことが行われていたとは知らされなかった。2人ともつらい思いをしても分かってもらえず、悲しく、苦しかったと思う」

ホーム側は昇真さんを落ち着かせようと、抗精神病薬の服薬を増やしていった。相談がないまま、ほかの薬を含め10種類近くに増加。行動障害の悪化を理由に4カ月間、面会を見合わせ、久しぶりに会うと、昇真さんはうつろな表情でよだれを垂らすようになっていた。西角さんは自宅へ戻すことを再三申し出たが、止められたという。

昇真さんはこの頃、風呂や洗面所で水を大量に飲む行動も現れるように。水の飲み過ぎによる低ナトリウム血症でけいれん発作を起こして倒れ、2回救急搬送された。「命が危うい」。西角さん夫婦はそう感じ、2022年以降、2人を順次退去させた。

驚くことはまだあった。昇真さんが壁紙をはがすなどして壊した部屋の修繕費の請求書が届き、金額を見ると約160万円。自分たちで見積もりを取り、恵と交渉した結果、約58万円になったが、3倍近い金額を請求されたことになる。

昇真さんはその後、別の事業者が運営する県外のグループホームに移り、朋晃さんは自宅の近くでヘルパーの訪問サービスを利用しながら一人暮らしをしている。西角さんは涙をこらえながら話した。「昇真も朋晃もひどく傷つけられた。こんな被害はもう最後にしてほしい」

取材・文/市川亨

障害者福祉ビジネス 食いものにされる税金と利用者
市川 亨
障害者福祉ビジネス 食いものにされる税金と利用者
2026/9/17
1,100円(税込)
288ページ
ISBN: 978-4087214260
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