「誰も傷つけない笑い」からの進化?

「全然好みじゃなかったんですけど、でもあんだけ笑わされたらもう勝ちです、優勝です。おめでとうございます」

『キングオブコント2026』で、審査員を務める飯塚悟志(東京03)は、19代目王者・ジェラードンをそう称えた。自分の好みと、チャンピオンにふさわしいかは別の話。飯塚のコメントには、ある意味で審査員の矜持が表れていた。

ジェラードンは特に1本目のネタがおもしろかった。お互いが「相手はとても酔っ払っている」と勘違いし、酔っ払いのフリをし続ける。そんな様子が生む突き抜けたバカバカしさを、2人の巧みな身体の動きが支えていた。

少しだけアンジャッシュの「すれ違いコント」を彷彿とさせる、後続のコント師が避けがちな構成という気もしたが、2人はそこを滑稽さと身体能力で突き抜けた。

優勝したジェラードン(画像/キングオブコント公式SNSより)
優勝したジェラードン(画像/キングオブコント公式SNSより)
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このネタを、審査員の山内健司(かまいたち)は次のように評した。

「2人ともボケてないじゃないですか。お互いがお互いの立場でやっててあそこまでのおもしろさになってるっていうのは、ちょっと衝撃でした」

もちろん、おもしろい人間を演じていたという点では、ジェラードンもボケていたと言えなくはないだろう。けれど、ツッコミは不在だ。ここで言われている「2人ともボケてない」は、ツッコミによってボケ=おもしろい箇所が際立たされていない、と理解したほうがいい。

振り返ってみれば、去年の『M-1グランプリ2025』(テレビ朝日系)でチャンピオンとなった、たくろうも「どちらもボケてない」ネタだった。今大会の上位3組に絞っても、蛙亭やヤッホイのネタはツッコミが希薄だ。

近年の笑いのトレンドなのだろうか。だとするとジェラードンの場合、トリオからツッコミ役が抜けボケ2人の体制になったことで、期せずしてトレンドにハマっている。

「誰も傷つけない笑い」がしきりに言われていた時期がある。「どちらもボケてない笑い」は、ボケを否定する要素を含むツッコミの不在という点で、「誰も傷つけない笑い」の流れの上にある気もする。つまり「ボケがツッコミに否定される様子に同調し傷ついたと感じる人が一定数出てくる構図を避ける笑い」へと進化を遂げたのかもしれない。