「最初は完全にファッションだった」
横浜のとあるバーでカウンターに立つ男性。白目は黒く染まり、頭と頬骨にはシリコンが埋め込まれ、耳は尖っている。顔を覆うタトゥー。そして両手を見ると、左手の薬指と右手の小指がない。
海外では「Meji」の名で知られ、南米を中心としたタトゥーコンベンションに“身体改造のアジア代表”として招かれているメジルシ髙倉だ。
「最初は完全にファッションだったんです」
すべての始まりは19歳のころ。パンクバンドが好きで、肘にクモの巣のタトゥーを入れた。当時は、身体そのものを変えようという考えなどなかったという。
ところが20代後半、手の甲にシリコンを入れたことをきっかけに、興味はタトゥーから「身体改造」というカルチャーそのものへ向かっていく。
やがて白目を黒く見せる「アイボールタトゥー」、耳を尖らせる「イヤーポインティング」、舌を二つに割る「スプリットタン」などを経験。頭や頬骨、腕にはシリコンを埋め込み、乳首とへそも切除した。
そして、左手の薬指と右手の小指も自らの意思で切除した。
「左の薬指を取ったら、残った指と指の間がずっと引っ張られるような感覚が消えなかったんです。それなら、端にある小指を取ったらどうなるのか、と。試しにですね」
一般の人が同じ身体改造を施そうとすれば、「3000~4000万円くらいじゃないですかね」と髙倉は語る。
では、これほど身体を変えてしまうと、日常生活はどうなるのか。
「いちばん大変だったのは、ない指がかゆいことです。かゆいのに、かこうにも、その指がそこにない」
バーでお釣りを受け取れば、指のない隙間から小銭を落とす。化粧水を手に出せば、そのまま流れ落ちる。そして顔認証も「ほぼダメ」。本人なのに、本人として認識されないという。
それでも髙倉は後悔していない。それどころか、自らの身体を「作品」と捉え、現在も身体改造を続けている。
「むしろ今の僕は、『便利』ではなく『不便』に向かっています。その不便さ自体を楽しんでいるんです」
ファッションとして始めた一つのタトゥーは、なぜ指や眼球にまで及んだのか。そして、身体を「作品」に変え続けた先に、彼は何を見ているのか。
前編では、19歳で初めてタトゥーを入れてから、世界的な身体改造アーティストとの出会いを経て、指の切除やアイボールタトゥーに至るまでを聞いた。
後編では、「ない指がかゆい」「顔認証が通らない」という改造後の日常から、海外で“身体改造のアジア代表”として活動する現在、そして「爬虫類と宇宙人のいいとこ取り」を目指すという今後の身体改造計画に迫る。
取材・文/全夏潤 インタビュー写真/わけとく 写真提供/メジルシ髙倉
<プロフィール>
メジルシ髙倉
福島県出身。実家は神社。高校まで野球に打ち込み、23歳で英国に留学。現在は横浜でバー「HELL BAR」を経営しながら、海外のタトゥーコンベンションに「Meji」の名で招かれている。













