通常学級か、それとも支援学級か
親御さんから「子どもの学校・学級を選ぶとき、どう考えればいいか」と相談されることがしばしばあります。
例えばお子さんに軽度の知的障害があり、就学相談の結果として、教育委員会から「特別支援学級が適当」という通知を受ける場合があります。その場合、支援級を選ぶこともできますが、本人と親の希望として通常学級を選ぶこともできます。そこで「どう選ぶか」という悩みが生じるわけです。
本人や親の希望と支援者の見立てが一致していれば悩まなくて済むのですが、教育委員会が「支援級」と判断しているのに対して、本人や親は通常学級を希望する場合もあります。また、ここで挙げた例とは反対に、本人や親が支援級に通うことを希望しているのに、教育委員会から「通常学級」という判断が出ることもあります。
私はそのような相談を受けたときには、お子さんが「学校に行く目的」を一緒に考えるようにしています。
通常学級で国語や算数を学ばせたい場合
「支援級でサポートを受けたほうが学びやすい」と考えられる状況で、本人や親が通常学級を希望している場合には、「通常学級に行く目的」が何かを考えます。
例えば、親御さんが目的としてイメージしているのが「国語・算数・理科・社会をみんなと同じように学ばせたい」ということだとすると、知的障害の場合、それは難しいという話をせざるを得ません。これまでにも述べてきた通り、知的障害の子は知的機能の発達が平均に比べて「ゆっくり」です。同年代の子どもたちと同じペースで学ばせようとすれば、本人に強い負荷をかけてしまいます。
車椅子に乗っている子に、通常学級の体育の授業で「立って走る50メートル走」を強要することはありません。その子に「あなたも車椅子から降りて、みんなと同じように立ち上がって走ろうよ」とは言わないでしょう。
その子のやり方では参加するのが難しい部分については、子どもと社会の間に障害があると考えて、なんらかの配慮をします。例えば、その子は車椅子に乗って走ることにして、安全かつ適度な運動になるように、運動量を調整してもいいわけです。
そのような配慮が必要なのが、車椅子に乗っている子にとっては体育の授業であり、知的障害の子にとっては国語・算数・理科・社会などの授業だということです。