極右は「ネットに強い」だけ?
「スマートフォンを開き、画面をスクロールすると流れてくるショート動画。
大きな字幕、怒った顔、耳に残る強烈なスローガン。給与明細から引かれる税金は高いし、そういえば最近街中に外国人が増えたような気がする。
ニュースでは誰も自分の暮らしの話をしてくれないけど、画面の中のこの人は言葉にしてくれる。コメントを書き込むと、『いいね』がつき、返信が来る。ああ、同じ気持ちの人がこんなにいたのか。もっと多くの人に、この人の言葉を届けたい。
スマホがあれば、毎日いつでもどこでも政治に参加できる。仲間もできる。オールドメディアは、この人の発言を「差別的」と批判しているようだ。たしかに、この人はたまに言いすぎることもあるけど、それだって既得権益のエリートたちを恐れずに、本音で向き合ってくれている証拠だ。
この人が見下されると、自分まで見下された気がする。この人の言葉がまともに受け取られない世の中のほうが、おかしいのではないか。動画を拡散しよう。自分たちが支えなければ。手取りも生活もまだ何も変わってはいないけど、政治を変えようと一歩踏み出した自分のことは、前よりちょっと好きだ。」
――こうして蓄積されたクリックやコメントのデータをもとに、何百万もの有権者の心を掴む次の動画やスローガンが作られる。
アルゴリズムはそれをさらに拡散する。嘘や差別発言すらも、「オールドメディアを恐れていない」という強みになる。
失言を主流メディアが批判的に取り上げ、知識人がしかめ面をすればするほど、それがむしろ宣伝効果になり、支持者の団結はますます深まっていく。こんな光景が、世界のあちこちで広がっているのではないだろうか。
極右の躍進を語るうえで、そのネット戦略の巧みさに言及せずにはいられない。怒りや不安を刺激する短い言葉とショート動画のアルゴリズムは相性が良い。既成政党がネット選挙時代の対応に手間取るなか、極右政党やその周辺のインフルエンサーはいち早くSNSを政治動員に利用してきた。ドイツのAfD(ドイツのための選択肢)、アメリカのトランプ支持運動、日本の参政党などについても、SNS上での強さは繰り返し指摘されている。
フランスの国民連合もまた例外ではない。同党は他党に先駆けて、早くからネットを政治活動に取り入れてきた。ここ数年とりわけ強い動員力を持っているのがTikTokである。党首ジョルダン・バルデラのフォロワーは現在200万人を超え、そこでは演説や政策の説明だけでなく、たわいもない日常の様子や支持者との交流などのショート動画が大量に発信されている。彼は、政治家というよりインフルエンサーに近いスタイルで、若い利用者の日常的なフィードに入り込んでいるのである。
しかし、極右の躍進をこうしたネット戦略だけで説明することはできない。極右は長年、主流メディアを「偏向したエリートのメディア」として批判してきた一方で、その主流メディアに繰り返し取り上げられることで、社会のなかで可視化され、その言葉や存在が次第に「当たり前」のものになってきた側面もあるからだ。
したがって、極右がメディアを通じて影響力を広げる仕組みを理解するには、ネット上の人気や個々の発信の巧みさだけでなく、複数の回路のつながりに目を向ける必要がある。独自メディアで発信された主張がSNSでバズり、主流メディアにも取り上げられることで、人々の「常識」として定着していく。インフルエンサーは差別的な言動さえも娯楽に仕立て、収益源にする。
こうした発信を通じて広まった見方や論点は、政党の側へと還流し、その主張や議題設定にも反映されていく。以下では、こうした「極右メディア」のエコシステムがどのように形づくられているのかを見ていこう。












