西シベリアの「安全圏」にも戦争が及んだ

ウクライナはその後、長距離ドローンの航続距離を延ばし、ロシア深部への攻撃を続けた。狙いは燃料や弾薬、航空戦力を支える後方拠点をたたき、戦争を継続する能力そのものをそぐことだ。

航続距離約2000キロ超の「リューティ」や、量産型長距離ドローン「FP-1」などを投入し、攻撃範囲を東に広げた。

象徴的だったのが、2026年7月のオムスク製油所への攻撃だ。西シベリア・オムスク州にある同製油所は、ウクライナ側支配地域から約2700キロ離れ、年間約2200万トンを処理するロシア最大級の施設。

航空燃料やディーゼル燃料を生産し、ロシア軍の兵たんを支える重要インフラでもある。交流サイトには黒煙を上げる製油所の映像が相次ぎ、「安全圏」と考えられていた西シベリアにも戦争が及んだことを印象付けた。

ロシア後方への攻撃は、この1年で急増している。ウクライナによるロシアの製油所への攻撃は2026年に入り少なくとも194件に上り、前年同期の約11倍となった。5月には攻撃成功数が月間16件と過去最多を記録。ロシアでは燃料不足が深刻化した。

標的は製油所だけではない。航空基地や弾薬庫、防衛産業施設、石油積み出し港へと広がり、戦いの重心は前線での領土争いから、ロシアの兵たん・エネルギー基盤を揺さぶる後方攻撃にも移りつつある。

「技術的にはサハリンも攻撃できる。やっていないだけだ」

オムスク攻撃と同じ日には、さらに東のノボシビルスク州で初めて無人機飛来警報が発令された。実際の攻撃は確認されなかったものの、「シベリアは安全」という認識は崩れ始めた。

攻撃そのものだけでなく、防空部隊を広大な国土へ分散させることも、ウクライナ側の狙いとみられている。

オムスク攻撃の翌日、ウクライナ治安当局者に「攻撃範囲をどこまで広げるのか」と尋ねた。

「技術的にはサハリンも攻撃できる。やっていないだけだ」

6000キロ以上離れたサハリンをどう攻撃するというのか。さらに「サハリン2は『安全』なのか」と聞くと、当局者は「重要なのは、どこまで飛ぶかではない。どこから飛ばすかだ」と答えた。

ウクライナ治安当局者の「技術的にはサハリンも攻撃できる」との発言にプーチンも真っ青⁉
ウクライナ治安当局者の「技術的にはサハリンも攻撃できる」との発言にプーチンも真っ青⁉

サハリンには、日本の三菱商事と三井物産が参画する液化天然ガス(LNG)事業「サハリン2」がある。日本の主要なLNG調達先の一つだ。

ロシア政府関係者は「日本との重要プロジェクトであるサハリン2を、ウクライナが攻撃することは考えられない」と一笑に付した。