ロシアドローンを操縦する北朝鮮兵

一方、ウクライナ側の発言は、地理的な距離だけを理由にサハリンを「聖域」とみなすことはできないとの認識を示している。

もちろん、現在のドローンがウクライナからサハリンまで直接飛行できるわけではない。しかし、クモの巣作戦が示したのは、「遠いから安全」という考え方そのものが通用しなくなったという現実だ。

機体を目標近くまで運び、現地協力者や遠隔通信網を組み合わせれば、後方深くの基地や重要インフラも攻撃対象になり得る。仮にサハリンのLNG拠点が攻撃されれば、ホルムズ海峡で混迷を極める日本のエネルギー事情が、更に混乱する可能性が高い。

日本との関係では、もう一つ見逃せない動きがある。ロシアと北朝鮮の軍事協力だ。

ウクライナ軍の内部文書は、北朝鮮の技術者がロシア中部タタールスタン共和国エラブガの無人機工場で、イラン製無人機「シャヘド」を原型とする攻撃型ドローンの生産に関わっていると分析している。

機体の組み立てだけでなく、生産管理や運用技術も習得し、量産のノウハウを北朝鮮へ持ち帰ろうとしているという。

実戦経験も蓄積されつつある。北朝鮮兵約1万人は表向きにはロシア西部クルスク州で国境警備に当たっているとされる。しかし、ウクライナ当局によると、一部はクルスク州からウクライナ北東部スムイ州に向けて無人機を運用し、ウクライナ軍陣地の偵察や攻撃の照準支援に加わっている。

ウクライナ側が入手したFPVドローンの映像データを解析したところ、操縦に関与したとみられる北朝鮮人オペレーターの姿が記録されていたという。

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もし北朝鮮兵が技術を自国に持ち帰ったら…

さらに、ウクライナ情報機関が傍受した通信アプリ「テレグラム」のやりとりでは、ロシア軍将校と北朝鮮兵がロシア語とハングルを自動翻訳しながら、作戦上の指示や報告を交わしていたことも確認された。前線では、ハングルで記されたロシア兵器の使用マニュアルも見つかっている。

北朝鮮兵は歩兵として戦うだけではなく、ロシア軍の無人機運用に組み込まれ、現代戦の実戦経験を積み始めている。

こうした経験が朝鮮半島へ持ち帰られれば、日本も無関係ではない。ロシア政府関係者は「北朝鮮が400~500機規模の無人機を日本へ同時に飛ばした場合、全てを迎撃することは極めて難しい」との見方を示した。

日本は弾道ミサイルや巡航ミサイルへの防衛体制を強化してきたが、小型無人機による大規模な飽和攻撃は十分に想定されていないとみている。

ウクライナで現在進行する「ドローン戦争」が示したのは、新たな兵器の登場だけではない。前線から数千キロ離れた航空基地や製油所、発電所も、目標近くから無人機を発進させれば攻撃対象になり得るという現実だ。そして、その変化は日本の安全保障にも新たな課題を突き付けている。

文/東銀座コンフィデンシャル  写真/shutterstock