「金太郎、怒髪天。」(集英社文庫・コミック版9巻収録)
社内にバラまかれた不倫スキャンダル
恋愛では、「好きなら一緒になればいい」とは限らない。むしろ本当に相手を大事に思うなら、気持ちがあっても踏み込まないほうがいいこともある。
『サラリーマン金太郎』第89話は、そんな残酷な誠実さが描かれる回である。
この回で金太郎は、自分との不倫スキャンダルに巻き込まれた千秋を取り戻すため、ヤクザの本拠地へと乗り込む。相手は見るからに危ない連中ばかりだが、金太郎は傷だらけになりながらも真正面からぶつかっていく。
ここだけ見れば、惚れた女を命がけで救いに行く、熱いヒーローの話である。
だが本当に胸に刺さるのは、そのあとだ。
ようやく千秋を見つけた金太郎は、泣きじゃくる千秋を抱きしめ、「お前が好きだ」とはっきり言う。しかも「お前のために来たのは当たり前だ」とまで言う。ここまで言われたら、普通は結ばれる流れだと思ってしまう。
だが金太郎は新婚で妻子持ち。その直後に「好きだからってどうしようもねえだろうが! 俺には女房と子供がいるんだよ!!」と言い切り、「帰ろう」「家へ帰ろう」と千秋を返す。
好きじゃないから断るのではない。好きでも、一緒になれない。その線を、金太郎は曖昧にしない。
身体の関係こそ持たなかったものの、世間的には十分に不倫と思われても仕方ないところまで来てしまった。だが最後に男として筋を通したことで、妙にかっこよく見えてしまうのが金太郎という男なのだ。
最後、千秋の祖父・川井会長に頭を下げ、千秋に「お前の事は一生忘れない」と告げて去った金太郎が、外で一人叫ぶ場面まで含めて、ぜひ漫画で読んでほしい。























