第二新卒市場という「次の椅子」が常に用意され
新卒採用市場は少子化による超・売り手市場が続いている。つまり学生側には「いつでも辞められる」「たまたま入社した会社が良くないだけで、探せばもっと自分に合う良い会社があるはずだ」という期待感がある。
彼らには、初日で逃げ出しても問題ないと判断してしまう前提条件が整っているのだ。
さらに、かつての企業には終身雇用という名の「逃げ場のない檻」が存在していた。終身雇用制度という檻によって入社した社員が辞めづらく、我慢を強いて引き留めていた側面がある。
だが、退職代行という「脱出装置」が標準装備され、第二新卒市場という「次の椅子」が常に用意されている現代において、新卒社員には常に転職という選択肢が存在し続ける。
また、“入社初日に退職”という悲劇の原因は企業側にもある。
いまだに多くの企業では、経営陣から「今年は〇〇人採れ」というノルマを課された人事部が、最低限の「頭数」を揃えるための採用を続けている。
入社させること自体がゴールになると選考の目は曇り、学歴が良いから採用、素直そうだから採用、母集団の中で相対評価して採用……。求職者からの応募が少ない企業ほど、採用するポイントを探しに行く選考になりがちだ。つまり、選考時に感じた違和感を見過ごしやすくなるのだ。
そもそも単なる企業側の採用ミス
さらに深刻なのは、現場のマネジメント層のアップデート不足だ。
アルー株式会社が2026年1月に発表した調査によれば、Z世代の部下を持つ現役課長の65.2%、つまり約6割以上が「育成方法に確信が持てない」と回答している。
彼らが何を考え、何を求めているのかわからない。「今どきの若者は……」というフレーズは昔からあるものの、Z世代特有の事情も重なり、構造的にZ世代への理解がしづらくなっている。
“入社初日で退職”事案は、冷静に考えると、そもそも単なる企業側の採用ミス(ミスマッチ)か、オンボーディングの失敗である。
どれほど新人の資質に問題があっても、その人物を「自社に合う」と判断し、内定を出したのは企業側だ。初日で破綻するようなミスマッチを引き起こしたのは「数を揃えればいい」と目を瞑った選考の甘さや、現代の若者の解像度が低いがゆえに起こしたミスマッチが原因である。
一方で、若者自身にも向き合うべき課題がある。コピーミスで辞めてしまうような人材はどこへ行っても「理想と現実」の摩擦に耐えられず、短期離職を繰り返すキャリアの迷宮(ラビリンス)に迷い込む可能性が高い。













