再び同じ失敗を繰り返す恐れも
例えば、先述のコピーのミスで注意された新入社員について。
コピーのミスを注意されたのは、彼がダメな人間だからではない。単に「コピー」という仕事の成果物に不備があるからであり、指摘すれば改善してくれるだろうという先輩社員からの期待があるからだ。
そもそもミスをするのは仕事の仕方に問題があるのであって、ミスをしない仕事の進め方を身につければ良いだけである。新人の立場であればミスをしないかどうかよりも、ミスをどう受け止めて改善するのかという姿勢のほうがはるかに重要だ。
先輩や職場環境に不満があるとしても、その仕事を選んだのはほかでもない自分だ。社会人とは、自分の選択に責任を持つことが求められる。仕事上の不満を解消するのも自分のご機嫌を取るのも自分にある。「教え方が悪い」「放置されている」と嘆く前に、どうすればその状況を脱することができるのか考える癖をつけたほうが合理的だ。
「他にもっと良い会社があるはず」という期待は、隣の芝生が青く見えているだけかもしれない。もちろん、明らかなブラック企業にあたってしまった可能性があればすぐに離脱すべきだが、ろくに分析せずに辞めてしまえば再び同じ失敗を繰り返す恐れもある。
2026年現在、第二新卒市場は活況ではあるものの、多くの企業が評価するのは「合わない環境でも何らかの成果を出した人」や「少なくとも自分の非を認めて修正できる人」だ。
しなやかさがない人材は、どの企業にも共通して敬遠される
ビジネスの世界において、ある程度の不遇には自分で対処できる自律性と心のしなやかさ(レジリエンス)がない人材は、どの企業にも共通して敬遠される。周囲が気を遣わなければならない分、組織にとってはコストの高い人材と評価されるからである。
新卒社員の入社直後の離職は、組織と個人の両方がアップデートを迫られている“炭鉱のカナリア”といえる。企業は「頭数確保」の採用から脱却し、Z世代の価値観を理解したリアルなオンボーディングを本気で構築する必要がある。
一方、新卒社員は少しの摩擦を成長の糧に変えるレジリエンスを養い、自分の選択に責任を持ち、小さな違和感を「改善提案」に変える力を身につける努力が求められる。その努力の積み重ねによって、どの企業でも通用し、自ら仕事を選択できる本当の強さにつながる。
かつて私が聞いた新入社員の「蒸発」エピソードは、今も私たちに静かに問いかけている—— 会社も人も、変わらなければ選ばれなくなる時代が、本格的に到来したのだと。
文/村上ゆかり 写真/shutterstock













