#1 初めての東京 はこちらから
#3 外面がいいだけ はこちらから
#4 女子会 はこちらから
登場人物の妙なリアリティと温かさ
タワーマンション(タワマン)を舞台に、都市で暮らす人々の格差や嫉妬心を描くタワマン文学。先駆者である窓際三等兵氏の最新作、『タワマンに住んで後悔してる』(KADOKAWA)が話題だ。
九州から念願の東京転勤が叶い、憧れだったタワマン(低層階)の部屋を購入した渕上(ふちがみ)家。専業主婦の舞は初めての東京暮らしに戸惑いながらも、息子・悠真の野球チームを通して同じタワマンに住むママ、サバサバ系バリキャリウーマン・瀧本香織(中層階在住)とボスママ的存在のエリート駐在妻・堀恵(高層階在住)のふたりと交流を深めていく。
本記事では、旦那が一流商社勤務でNYからの転勤帰りという、堀恵の家でのお茶会や、親子が集まるBBQで粋な肉の焼き方を披露する広告マンなど、これまで馴染みのなかった人たちとの交流の中で、どうしても自分との格差を感じてしまう主人公・舞のエピソードを紹介。
フィクションとは思えないほど作り込まれたディティールに迫るべく、担当編集者に原作者・窓際三等兵氏の魅力について尋ねた。
――お子さんが通い始める塾や、タワマン高層階ではお米が固いなどの描写等、ディティールが細かいですね。
窓際三等兵先生は「タワマン文学」の先駆者的存在であるため、タワマンに住む人々の生活をシニカルに描く点が注目されがちですが、物語の中にいる人間たちの描写には妙なリアリティと温かさがあります。
この相対するものが絶妙なバランスで同居している点が、窓際さん作品の魅力だと思っています。とくに各登場人物の人物像はかなり細かく考えられていて、物語の中に出していない設定も多くあります。
小説の場合、人物の背景までしっかり描けますが、コミックとなると描ける範囲が限られてくるので、随所に背景を想像させる余白を作ってもらいました。小説や本作もそうですが、先が読めないストーリーラインの構築と「人を描ける」点が素晴らしいので、今後きっとタワマン以外の題材でも面白い作品を書いていくんだろうなと楽しみにしています。
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