「相場に合っていない物件は売れなくなっただけ」

今回の5000万円引きとなった部屋も、「港区や千代田区の都心ならともかく、中央区と言っても駅から徒歩20分の埋立地のタワマンに4億円や5億円なんて価値があるわけない」(A氏)。

転売目的で購入した人や業者が、右肩上がりの相場に乗じて実際の価値よりも高い価格を提示し、在庫となったので徐々に売値を切り下げているとみるのが自然だという。三田ガーデンヒルズも、大幅値下げとなった部屋は間取りや眺望に難があり、これまでの売値が高すぎたとのことだ。

これは郊外でも同様だ。幕張ベイパークは販売当初、ファミリータイプでも5000万円台からという割安感のある価格からマンション系の有名インフルエンサーがおすすめしたことで人気が出た。

もっとも、京葉線の海浜幕張駅から徒歩15分程度と離れており、都心で働く共働き世帯にとっては少しクセのある物件だった。「80㎡の部屋が7000万円で買えるから割安なのであって、9000万円出して買おうという人はなかなかいないのでは」とA氏は指摘する。

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相模原の新築物件も、駅からは徒歩13分と距離があり、周辺相場から乖離していた。「不動産の情報が素人でも簡単に手に入るようになった結果、情報の非対称性が増え、中古・新築問わず相場に合っていない物件は売れなくなっただけ」(A氏)。

もっとも、足元では「成約事例」を人工的に作り出す業者も出てきているから油断がならない。3月、日本橋のマンション「ザ・パークワンズ日本橋人形町」の80㎡の部屋が3億6500万円で売れたという事例は、不動産業界を超えて大きな話題となった。

同物件は賃貸用であり、設備も投資効率を抑えるために最低限となっており、一般的にイメージされる「3億円超の高級マンション」とは雲泥の差だ。実際に取引を行ったのは法人であり、成約事例を作って相場を引き上げたいという狙いがあった可能が指摘される。

「ここまで目立つのは珍しいが、過去には晴海フラッグや湾岸エリアでもこのような取引形態がよく見られた」とA氏は話す。

正しい価格が読めない狂乱相場の中、これからマンションを買おうという人々はどうすれば騙されずに済むのか。こう悩む人は多いだろうが、A氏は「多少割高であっても、買ってくれる客がいれば成立するのが相場だし、いちいち指摘することはない」と話す。

誰も信じられない世界だが、A氏がおすすめするのが、「相場感」を磨くことだという。買いたいエリアの物件がある場合、不動産ポータルサイトの新着情報を毎日チェックしていれば、高いか安いかがわかってくるという。

もっとも、「誰の目から見ても割安な物件なんてものはない」というのもまた事実。金利上昇や中東情勢の混乱といった不透明な情勢でも、価格相応の物件は順調に売れているという。

強欲な売主に騙されないぞと力んでばかりだと、さらに買い時を逃してしまう可能性は高そうだ。

文/築地コンフィデンシャル