落合中日史上最強のチームは06年

06年の中日は、オープン戦防御率1.54で12球団トップを記録し、優勝候補の大本命と目された。序盤はドミンゴ、マルティネスの不振や中田賢一の故障離脱でローテーションが揺らぎ、巨人に先を走られたが、前年とは違い交流戦で流れを変える。

3年目の佐藤充を抜擢すると、交流戦で5勝無敗、防御率0.91という驚異的な数字を残しブレイク。球団50年ぶりとなる4試合連続完封も記録し、投手陣全体を押し上げた。落合は「調子の良い選手を使う」という合理的原則を貫き、実績や序列よりも状態を重視する采配で戦力を最大化した。

戦術面で光ったのは、徹底した守備・走塁重視のスタイルだった。アライバの二遊間と谷繁のリードを中心としたセンターラインは堅牢で、守備位置のシフトや配球を組み合わせ、相手の機動力を封じ込めた。

外野もアレックスや英智ら守備型選手を要所で投入し、失点を最小限に抑え込む戦略を徹底。攻撃では「長打を待つのではなく、次の塁を狙う」意識が共有され、1点を取り切る試合運びからはチーム全体の野球脳のレベルの高さが感じられた。

それと同時に、クリーンアップには福留とウッズを固定し、得点源を明確化。好不調の波をなくすために「お前がマネをしていいのは前田(智徳)だけだ。このオフは徹底的にフォームを変えるぞ」と言われた福留は打率.351で首位打者とMVPを獲得。

「あいつは放っておいても成績を残すよ。だから、自由にやらせているんだ」と信頼されていたウッズは47本塁打、144打点で本塁打王と打点王を獲得。二人で打撃三冠部門を独占し、守備と機動力のチームに圧倒的な得点力を付与した。手堅さと長打力を融合させ、落合史上でも最も完成度の高いチームとなった。

マネジメント面では、カットと合理主義を徹底しつつ、言葉と役割の付与で選手を動かした。長年チームを支えた立浪は攻守にわたり衰えが露呈したことや、森野の台頭でレギュラーを外す。

とはいえ代打起用の役割を明確に伝えられたことで、腐ることなく奮起。打率.321と勝負強さを発揮した。山本昌も同様で、阪神との天王山で起用されると、史上最年長ノーヒットノーランを達成。非情一辺倒ではなく、ここぞでベテランに託す信頼も見せて、最高の結果を生んだ。

落合は多くを語る監督ではなかったが、必要な場面での一言は選手に強烈な影響を与えた。阪神に猛追されたシーズン終盤、落合が「最後は自分を信じろ」と伝えたことで、選手たちは疲労の中でも集中力を保ち続けた。優勝を決めた10月10日の巨人戦ではウッズと抱き合い涙を見せるなど、普段のイメージとはうってかわり、エモーショナルな一面を見せた。

このシーズンの中日は最終的に87勝を挙げ、チーム打率、防御率、得点、失点のすべてでリーグトップ。落合自身も「考えていた以上のスピードで進化しているので、この先どこまで強くなるのか、末恐ろしいようなところがあります」とコメントしたほどだ。この3年目こそ、完成度・合理性・人心掌握が渾然一体となった「最強の落合中日」であった。

ところが、圧倒的な完成度でリーグを制しながらも日本シリーズでは「新庄フィーバー」に沸く日本ハムに屈した。初戦こそ川上憲伸で勝利したが、第2戦以降は相手の継投策や勢いに押され、まさかの4連敗。この敗北は、落合に「シーズンの戦い方」と「短期決戦の戦略」は別物であることを痛感させる契機となった。