自国を守る圧倒的な軍事力も、国を動かす資源もない

日本の政治家は、岸田文雄元首相しかり高市首相しかり、相手の顔色を窺って態度をコロコロと変えるのが大変お得意なようである。

強い相手には徹底的にすり寄るし、相手によって見せる顔を全く違うものにするのだ。もし国内政治で総理大臣がこのような八方美人の態度をとり、言うことをコロコロ変えていたら、私は強く批判する。信念を持たずに周囲の顔色ばかりを窺う政治家は信用できないからだ。

しかし外交においては話が全く別である。態度をコロコロ変えていることが相手国に知られない限りにおいてだが、そもそも外国は日本の首相がおべっかを使っていることにさほど関心がない。振り返れば、私たち日本人も外国の首脳が他国で何を発言しているかなど気にしていないだろう。

日本が相手の顔色を窺って態度を変えることは、いい悪いではなく、「これ以上どうしろというのだ」というのが実状ではないか。日本には自国を守る圧倒的な軍事力も、国を動かす資源もない。そのような国が、理想やプライドだけを振りかざして生きていけるほど世界は甘くない。

満面の笑みの高市首相(本人Xより)
満面の笑みの高市首相(本人Xより)

このような「相手によって態度を変え、保険をかける」日本のやり方を、専門的な言葉で「ヘッジング戦略」と呼ぶ。

日本外交は、大きく分けて「アメリカへの同盟強化」「中国との経済的な関与」「その他の国との実利外交」という三つの要素から成る。外務省が公式に出している『外交青書』を読み解くと、いかに相手に合わせて言葉を使い分けているかがわかる。

安全のためにはひたすらヨイショするしか方法がない

第一に安全保障を依存しているアメリカに対してだ。自分たちの力だけでは国を守れないため「価値観が完全に一致する親友です」と熱烈にアピールし頼らなければならない。『外交青書』(2025年版)には次のように書かれている。

「第一に、日米同盟の充実・強化です。日米同盟は、日本の外交・安全保障の基軸であり、トランプ政権との間でも、強固な信頼関係を構築し、日米同盟を更なる高みに引き上げていきます」

高市首相がトランプ大統領の前で媚びているように振る舞ったのは、この「基軸」を守るために相手の顔色を最高レベルで窺った結果である。見栄えは悪いかもしれないが、国の安全のためにはひたすらヨイショするしか方法がない。

第二に、一番の貿易相手である中国に対する態度である。本来の日本の伝統であれば、中国に対しては「価値観」や「人権」といった耳の痛い話はできるだけ控えめにして、お金や経済、アジアの安定の話ばかりをする。『外交青書』(2025年版)にはこう書かれている。