二枚舌外交の限界を補うために

例えば、「日本は中立を保っているのではなく、裏で敵対の準備を進めているのではないか」と疑われるリスクだ。

だからこそ、「スナックママ」のやりすぎは良くない。理不尽で横暴な客に対しては、笑顔の中にも毅然とした態度でピシャリと対応するものである。繁盛する一流店とはそういうものだ。

そして、この曖昧で誤解されやすい二枚舌外交の限界を補うために、日本はこれからの方向性を明確に示す必要がある。例えば、対象を「東アジア」に限定し、この地域の経済的・軍事的な安定に対して積極的に関与していくと堂々と掲げてはどうだろうか。

外交の舞台で相手の顔色を窺い、泥臭く実利を追い求めること自体は、資源も力もない日本が生き残るための厳然たる事実であり、私はその経済合理性を支持する。だが、その根底にあるべき「国家としての誇り」まで売り渡してしまえば、単なる卑屈な迎合に成り下がる。

四方に媚を売りつつも、最後の一線では毅然と振る舞い、東アジアの安定という明確な軸を持つしたたかさこそが、国益を守る道ではないか。

文/小倉健一 写真/shutterstock