エクセルにデータ入力するデートにときめきとかあるかな

随分前にマッチングアプリを利用した婚活に成功した四十八歳の大変出世している知人は、マッチして実際に会うことになった男性十七人それぞれのデータをエクセルに落とし込んで吟味し、最終的に二人に絞り込んでから四か月デートを重ねたらしい。そしてそのうちの一人、自営業の五十代バツイチ男と結婚した。

と、ぱっと聞いたときはさすが仕事のできる女~と思ったのだけど、具体的に想像してみると、そのエクセルって一体何のデータが取りまとめられているのか、と考えてしまってちょっと怖い。男と一回食事に行って、エクセルに入力するほどのデータってとれるっけ。そして服装が不潔ではないけれどもいまいちちぐはぐなセンスだなぁとか思った場合、それは後に他と比較するための何かしらの数値化をして記録するものだろうか。あるいはもっと金融資産とか身長とか尿酸値とか、もともと数値で表しやすいものを入力していくんだろうか。そうするとデートはデータをとるための聴取みたいにならないかしら。ときめきとかあるかな。

鈴木涼美「こんなふうに“男”でしかない自分を必死に生きている男たちと、女は恋愛して駆け引きしてなんとか殺し合わずに共存しなきゃいけないんだよな」_1
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と案じてしまう私は、彼女が長年夢中になっていた趣味をあるきっかけで中断し、不倫をやめ、婚活しようと思い立って、エクセル活用アプリデートを繰り返し、ついに納得のいくパートナーと法律婚をしている間、ずっと独身でちょこっとラブを繰り返し、好きな時に好きなだけ遊べる今の生活も悪くないなと思いながら、十年前と特に変わらない日々を過ごして四十歳になろうとしていた。別に結婚を否定しているわけじゃなかったけれど、なんかすっごく合う人がいたら考えようとか、三十九歳になったら考えようとか、大恋愛した相手の条件が悪くなければしてもいいかもとかぶつぶつ言いながら、具体的に結婚に繋がっていくような行動をとったことはない。そんな体たらくな私と目的完遂の彼女との差について、本作を読んで少しわかった気がした。