サヨナラ負けで「ビール30杯」をおごったおじさん

――分かります。逆に、タイガースの選手がデッドボールを当てられると、阪神ファンはまるで我が子が傷を負ったかのように、怒りを露わにする。敗戦の辛さも、皆で共有しようとしますよね。

そういえば以前、球場で、ヤクルトの村上宗隆選手にサヨナラヒットを打たれて負けた試合を観たのですが、阪神ファンのおじさんが売り子さんから「もう今日はええわ」と、ビールを30杯分ぐらい買って、周りの皆さんに「いいから、持ってってや」と呼びかけていたのが忘れられません(笑)。

――阪神ファンらしいですね。監督の采配についても、皆であれこれ想像して「こうでもない」「ああでもない」と議論したりする。

皆さんが、監督目線なんですよね。また、タイガースを「(わが)人生」と捉えたり、ふだん出場機会に恵まれない選手が活躍すると、わがことのように喜んだりする傾向も強い。

――ちなみに、采配の推理は「インファレンス効果(Inference Effect)」、選手の活躍を我が事のように喜ぶのは「チームID効果(Team Identification Effect)」と呼ぶべきもので、これらも幸福実感や「ウェルビーイング(心身共に満たされた状態)」と関係が深いんです。

え? どういうことですか?

――話すと長くなるので、詳しくは拙著をお読み下さいね(笑)。やっぱり、さばかんさんから見ても「阪神ファン」は他チームのファンと違う?

ええ。例えば読売ジャイアンツは“常勝軍団”なので、応援する方々にもちょっと余裕がある印象です。でも阪神ファンは、長い暗黒時代など「うまくいく(優勝する)とは限らない歴史」を知っている人が多い。だからこそ、「常に、真剣に応援しなければ」とのめり込みやすいのではないでしょうか。(#3へつづく)

「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう マーケッターが気づいた「効果と法則」』(集英社)
牛窪 恵
「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう
2026年3月5日
1,760円(税込)
四六判/224ページ
ISBN: 978-4-08-790234-1
【野球でなく「幸せ」に関する本です!】 ★「おひとりさま」「草食系」など数々の流行語を世に広め、「ホンマでっか!?TV」ほかテレビのコメンテーターでもおなじみのマーケッター・牛窪恵さん。大学教授でMBAホルダーでもある著者が、推し活と行動経済学などの研究を経て導き出した「Well-being(幸福感)」に繋がるキーワード、それが「阪神ファンと熱狂」でした。 ★みずからも熱狂的な阪神ファンで、毎年40試合前後を球場で観戦する著者だからこそ気づいた、彼らの体感的リアリティと行動心理の意外な関係。本書を読むことで、阪神ファン自身も気づいていない「幸福感」に繋がるヒントが、数多く得られるはずです。 ★本書ではそうした実践的ヒントを、著名なマーケティング理論や女性ファン(TORACO)約3000人への調査・取材を通して独自分析し、わかりやすく展開します。

 構成/牛窪恵