「不祥事のデパート」と呼ばれる歴史的背景

さらに神奈川県警が「また不祥事か」という冷ややかな視線を浴びるのには、長い負の歴史がある。

1999年には、現職警察官の覚醒剤使用を組織ぐるみで隠蔽した、戦後最悪とも称される不祥事が発覚した。当時の警察本部長が犯人隠避で有罪判決を受けるという、日本の警察史上類を見ない異常事態であった。

その後も、神奈川県警の汚職は枚挙に暇がない。

•裏金問題: 2003〜2008年にかけて、総額11億円余りの公金の不正流用。

• 性犯罪・盗撮:署内トイレでの盗撮、電車内での痴漢、さらには当直勤務中の交番内でくり返された性行為。

• 捜査の放置と怠慢:2012年に逗子、2024〜2025年に川崎で発生したストーカー殺人事件で警察が危険性を把握しながら有効な捜査を行なわず、犠牲者を出す結果を招いた。

• 証拠の捏造と誤認逮捕:2012年、パソコン遠隔操作事件における自白の強要や誤認逮捕、交通事故の供述調書を捏造。

2024年上半期には、わずか半年間で前年通期を超える逮捕者を出し、2025年にも懲戒処分件数が全国上位を維持するなど、組織の自浄作用が機能していないことが明確である。


日本一交通量の多い「国道16号・保土ヶ谷バイパス」は神奈川県警の所轄 ※写真はイメージです (写真/PhotoAC)

日本一交通量の多い「国道16号・保土ヶ谷バイパス」は神奈川県警の所轄 ※写真はイメージです (写真/PhotoAC)

腐敗を生む構造的要因は「ノルマ」と「予算」

なぜ神奈川県警では、こうした不祥事がくり返されるのか。前出の佐藤氏が解説する。

「今回の不祥事の核心は個人の問題ではなく、神奈川県警の構造的な欠陥にあります。
神奈川県は日本最大級の国際港湾の横浜・川崎の大都市圏に加え、観光地も多く、外国人犯罪、暴力団事案、密輸、ストーカー対応など、治安需要が警視庁級に及びます。

一方で県警の体制・人員はこれに見合わず、警視庁が約4万4000人の人員構成に対して、神奈川県警はその半分以下の約1万7000人しかいません。現場の一人当たりの負担が過大になりやすい。

その結果、事故抑止よりも検挙数や反則切符枚数といった『点数』で実績を求める圧力が強まり、安易な成果追求に傾いて違反の取り消しや隠蔽、帳尻合わせが起きやすくなります」

実際、巡査部長は動機を「実績を上げたかった」と供述している。警察内部には「努力目標」という名目の実質的なノルマが存在し、それが現場に強い同調圧力を生んでいるという。