「金太郎、出勤する。」(集英社文庫・コミック版1巻収録)
シングルファザーとして、赤ん坊を一人で育てながら、サラリーマン生活を始めた矢島金太郎。しかし、毎日会社に赤ん坊を連れて行くわけにもいかない。そこで金太郎は、アパート横の一軒家に住む隣人に子守を頼むことになる。
その隣人こそ、初出社前日、街中でチンピラに絡まれボコボコにされていたところを、金太郎が助けた男性――水木衛の家だった。
突然の来訪にもかかわらず、水木はとりあえず金太郎を家の中へ招き入れる。だが、そこで現れた息子・一樹の態度がよろしくない。やけに反抗的で、「クソじじいと一緒に飯なんか食えるか!」と暴言を吐き、お茶碗を割る始末。朝から家の空気は最悪だ。
実は一樹、家では威厳を保っていた父親が、街中で殴られ、金を出して謝る姿を目撃してしまっていた。それをきっかけに、父への態度が一変してしまったのだ。息子に何も言い返せず、ただ黙り込む水木夫妻。家の中には、重苦しい空気が流れる。
――と、その空気をぶち壊す男が一人。金太郎だ。
金太郎の拳が、一樹の顔面に炸裂。まさかの鉄拳制裁だ!
一樹は鼻血をブシュッと出しながらぶっ飛ぶ。当然、家の中は大パニック。両親は金太郎を責めようとするが、直後、金太郎は一樹に向かって語り出す。
殴られる痛さ、怖さ、情けなさ。そして、親が、子どもに向けている愛情の深さについて。
急に始まる人生講義。いい話だ。すごくいい話だ。……が、さすがにやりすぎでは? だが意外にも、それを聞いた水木夫妻は大喜び。あれほど過保護だった水木の妻も、金太郎の虜となり、赤ん坊を快く預かることを申し出る。
ちなみに、日本財団が2020年に実施した「18歳意識調査(子どもと家族)」によると、体罰を受けた経験があると答えた人は15.1%。その中で、“しつけ”としての体罰を「容認しない」と答えた人は62.5%、「容認する」と答えた人は、わずか12.3%。
平成初期と令和で最も価値観が変わった部分のひとつが、体罰をめぐる認識だろう。ただし、この数字が示しているのは、「体罰=絶対悪」でも、「体罰=正解」でもないこと。
大事なのは、関係性と、そこに愛が伝わるかどうか。金太郎の拳に込められたものは、一樹に届いたのか。『サラリーマン金太郎』第3話は現代に問いかける名エピソードだ。



















