日本人の使えるお金が、ゼロになったわけではない
インバウンドを軸にした観光業は絶好調だ。訪日観光客の数は2025年上半期ですでに2000万人を超えている。過去最速のペースで、おそらく来年も記録は更新されるだろう。昨年のインバウンド消費は8兆円強。この額も、続いて更新されるはずだ。小さな国の国家予算並みの収益を、観光で稼ぎ出している国は、そう多くはない。都心や地方の観光地は、もはや日本人の方が少ないような印象だ。数字で測るまでもなく、日本の観光ブランドは、世界で抜きん出ている。安くて安全で、質のいいサービスを楽しめる。
それが日本ブランドの強みだ。裕福な中国・韓国・シンガポールなどアジア周辺国の訪問客を、採り入れやすい地政学的なリードもある。
この地政学的な利は、西洋諸国からは、とても魅力的に解釈されている。
中国やタイなど、近年のアジア経済のキーポイントとなる国へのアクセスが、西洋諸国はあまり良くない。歴史的な関係性も、深いとは言えない。豊富なアジアマネーの行き先は、地理が近く、交易の長い歴史を積み重ねてきた日本に集中するのは当然の流れだ。
特に、遣隋使・遣唐使の時代から東アジアとの交流が盛んだった九州地方は、今後も台湾や香港の有力企業が進出し、顕著な経済成長が見こまれる。日本はアジアマネーのほぼ中心にいて、高い観光ブランドを保ちつつ、周辺の経済成長国のお金の流動を「様子見」できる。世界情勢がどれだけ変わろうと、日本はアジア金融の要衝という、恵まれたポジションであり続けるのだ。
日本は一概に、貧しくなったわけではない。例えば、あなたの給料が低いのは別に「日本が凋落した」からではなく、単純に努力が足りないか、選んだ会社が悪いだけだ。
かつて僕は著書のなかで、次のように論じている。
「生まれた場所、今住んでいる場所に人生を決められる時代の終わり――これこそがN(日本)の解体の本質だ。その後に待っているのは、完全な自由競争社会である」 ITによるグローバリゼーションによって、日本の経済的優位は薄れたけれど、膨大な投資マネーと人的リソースは、怒濤の勢いで流れこんでいる。
人もお金も、国を超えて混ざり合っているのだ。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の時代は、とうに過ぎ去った。でも、日本人の使えるお金が、ゼロになったわけではない。ダイナミックな変化を楽しみつつ、新しいフォーマットの世界で自由に働き、遊び尽くせる人が、真のお金持ちになれる時代なのだ。













