思わぬ転落! 全財産を失う
戦後、百福は食品産業へと乗り出します。といっても、このときはまだラーメンをつくろうとはしていません。
配給制でろくに食料は届いておらず、空腹でバタバタと人が倒れていく状況を見て、百福は「栄養失調で亡くなる人が多い。ここをまずなんとかしなければ……」と考えました。そこで専門家の手を借りながら、栄養剤の開発に取り組むことにしたのです。
当初は、エキスをとるために食用カエルを用いて試行錯誤しましたが断念。しかし、失敗しても諦めないのが、百福スピリッツです。こんな言葉も残しました。
「失敗するとすぐに仕事を投げ出してしまうのは、泥棒に追い銭をやるのと同じだ」
百福は食用カエルから牛や豚のエキスに変えて、タンパク栄養剤「ビセイクル」を完成させます。ビセイクルは厚生省にも品質が認められ、同省が管理する病院でも使用されることになりました。
百福の食品産業が順調に売上を伸ばしていくと、従業員もどんどん増えていきます。面倒見がよい百福の家には、多くの若者が寝泊りするようになり、従業員たちと公私を共にしました。
しかし、ここから百福の人生は突如として暗転します。何度も頼まれたので情にほだされて、信用組合の理事長を渋々引き受けたところ、信用組合はあえなく倒産。理事長として社会的な責任を問われることになってしまったのです。
百福は築き上げてきた財産を、47歳でほぼ全部失うことになりました。