合戸の美学と生き方「好きだから全部乗り越えられる」

還暦を越えた64歳の今でも、午前中に3時間のトレーニングをこなし、ベンチプレスを135キロ持ち上げる合戸さん。自身を極限まで追い込む原動力はどこから生まれているのか。

「重さに挑戦していく楽しさが第一です。痛みを感じつつも、命の危機を感じる重さに挑戦していくときは全身に鳥肌が立つ。それが楽しくて、筋肉がでかくなっていくのを無限に追い求めてしまう。俺は“狂気”でも何でもない。いたって“普通”だと思ってます」

当然、年齢に応じて上げられる重量も減っていくが、「今の年齢でどこまでこの身体を良くできるかが現在のモチベーションだ」と語る合戸さん。

「64歳にもなれば、メンタルも弱くなるけど、トレーニングに関しては常に前向きだよ。むしろ忙しくてトレーニングできない日が続くほうが老化スピードも早まるし、精神的にきついね」

20歳から約45年間、様々な苦難を乗り越え、トレーニングに励んできた合戸さん。彼の人生にとって、ボディビルとは――。

「自分はトレーニングが好き。その過程に大会があるだけ。どんなことだって好きじゃないと続かない。根性とかメンタルとかの問題じゃない。好きだから全部乗り越えられる。だから『好き』が一番。『好き』は最強なんですよ」

最後に、ダイエットや健康など様々な目的でトレーニングに励む全国のトレーニーたちへのメッセージをいただいた。

「継続は力なり。まずは自分の身体が変わっていくことを楽しんで取り組むこと。でも楽しみの度が過ぎると俺みたいになっちゃうからそこは気を付けて(笑)。やり過ぎちゃうと命の危険が訪れますので……」

今日もどこかで限界の先に挑む男がいる。その男を“狂気”のごとく突き動かすものは、「好き」という純粋でまっすぐな強さだった。

#前編「実家をハンマーで破壊しジム化…“狂気の男”の誕生秘話」はこちら

還暦を越えた64歳の今でもトレーニングに励むボディビルダーの合戸孝二さん(撮影/岡部みつる)
還暦を越えた64歳の今でもトレーニングに励むボディビルダーの合戸孝二さん(撮影/岡部みつる)
すべての画像を見る

取材・文/木下未希