江川卓VS原辰徳 衝撃の初対戦

77年11月6日、秋空に似つかわしいほどの雲ひとつない快晴、神宮球場はおよそ四万五千人の観客で埋め尽くされた。ついに大学球界のスーパースター江川卓と時代を担うスーパースター候補の原辰徳との激突は、野球ファンはもちろん、二十歳前後の女姓たちもグルーピー気分で待ち望む形となった。

待望の第一打席は江川が原をキャチャーフライに仕留めた。「こんなもんか」と思った矢先の第二打席、原が江川のストレートをレフトスタンドに軽々と運んだ。スタンドからは黄色い歓声が湧き上がる。

「ほお〜、結構力あるな」ソロホームランを打たれて2対0で東海大のリード。その裏、東海大のエース遠藤一彦(元大洋)から集中打で一挙に3点を取り逆転。三打席目の対決はカーブを引っ掛けたゴロが三遊間の深いところに飛び内野安打。打ち取った当たりでもヒットはヒット。これで原は2安打1ホームラン。

そして最終回、5対2で法政リードのまま原の第四打席が回ってきた。

江川は、ホームランを打たれたことを少しだけ気に病み、この打席に限って本気で投げた。すべてストレートで三球三振。原は「今までの球はなんだったんだ!?」ごくりと唾を飲みこみ、江川の凄さをバッターボックス内でようやく体感したのだった。

大学ラストの秋季リーグは、またもや12試合10勝1敗1分で法政が史上四度目の四連覇を果たし、すべて完全優勝での四連覇は史上初となった。他大学を凌駕するほどの投打のバランスにより楽々優勝した感もあった。

四連覇の勝利数は、すべて勝ち点5で飾ったため40。このうち江川が28勝とセーブが2つと実に八割近く占めている。その間、打たれた本塁打も1本のみ。まさに江川さまさまである。

やはり怪物は、どこにいっても主役の座から降りることなく、みんなの期待通りの力を見せつけた。

この大学三、四年で“超人”の異名を取るまでになった江川最後のシーズンの成績は、9試合登板で投球回数81、奪三振51、失点10、6勝2敗1分、防御率1.11。

江川の大学四年間の通算成績は、71試合登板で47勝12敗、投球回数560と3分の2、奪三振443、失点83、自責点72、被本塁打8、防御率1.16。江川は、神宮の杜でも怪物の名に恥じぬように投げ続け、法政黄金時代を築いたのだった。

文/松永多佳倫

怪物 江川卓伝
松永 多佳倫
怪物 江川卓伝
2025/11/26
2,420円(税込)
448ページ
ISBN: 978-4087902181

令和に蘇る怪物・江川卓の真実――。

各時代の対戦相手、ライバル、チームメイトなど100人以上の関係者の証言をもとに、時代に翻弄された天才投手の光と影に彩られた軌跡をたどる評伝。

高校時代から「怪物」と称され、法政大での活躍、そして世紀のドラフト騒動「空白の一日」を経て巨人入り。つねに話題の中心にいて、短くも濃密なキャリアを送った江川卓。その圧倒的なピッチングは、彼自身だけでなく、共に戦った仲間、対峙したライバルたちの人生をも揺さぶった。昭和から令和へと受け継がれる“江川神話”の実像に迫る!

【内容】

はじめに

第一章 高校・大学・アメリカ留学編 1971年~1978年

伝説のはじまり/遠い聖地/怪物覚醒/甲子園デビュー/魂のエース・佃正樹の生涯/不協和音/最強の控え投手/江川からホームランを打った男/雨中の死闘/江川に勝った男/神宮デビュー/理不尽なしごき/黄金時代到来/有終の美/空白の一日

第二章 プロ野球編 1979年~1987年

証言者:新浦壽夫/髙代延博/掛布雅之/遠藤一彦/豊田誠佑/広岡達朗/中尾孝義/小早川毅彦/中畑清/西本聖/江夏豊

おわりに

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