近年の流行語大賞の傾向とは…

朝ドラの“象徴”でもあり、“話題性”づくりのため、多用されるヒロインの決め台詞。ノミネートはされなかったが、朝ドラ評論家の半澤さんが挙げるのが、2017年度前期放送の『ひよっこ』(主演:有村架純) のヒロインの台詞だ。

「ヒロイン・みね子の『頑張っぺ』という茨城弁の台詞が、とても印象的でした。ドラマの大事な場面でもたびたび使用され、最終回もその一言で終わりました。多用される台詞には、脚本家が作品を通して一番伝えたい思いがあらわれているケースもあります」

その一方で、近年の流行語は、Z世代を中心にSNSで爆発的に拡散された言葉などが選出される傾向が目立っており、ドラマ作品の中の台詞が選ばれることが減ってきている。

「エンタメが多様化・分散化し、大衆が同じドラマを見る時代ではなくなっている分、以前ほどドラマ作品から流行語が生まれる傾向は少なくなってきています。かつては『僕は死にましぇ~ん』(1991年・『101回目のプロポーズ』より)や『同情するならカネをくれ』(1994年・『家なき子』より)など台詞での大賞受賞はありましたが、近年では2013年の『倍返し』(『半澤直樹』より)、『じぇじぇじぇ』の異例のダブル受賞を除いては、タイトルが受賞することはあっても、台詞の受賞はほとんど見受けられなくなりました」

そういった意味でも、朝ドラの台詞がランクインしている背景には、「話題性もさることながら、半年間という長期で放送されるドラマだからこその優位性もある」と半澤さんは言う。

最後に、現在放送中の『ばけばけ』についても気になる台詞はあるのか、聞いてみたところ、

「島根県の方言である『そげですね』『ごしなさい』という独特の言い回しが印象的ですね。特に言葉やフレーズに重きを置かず、浸透させるために使用していないからこそ、ナチュラルに耳に入ってくる言葉として親しみがわいてきます」

エンタメが多様化する現代においても、朝ドラの言葉には、人をふっと笑顔にする力があるのだろう。果たして2025年はどの言葉が大賞に輝くのか、目が離せない。―ほいたらね。

現在放送中の2025年度後期朝ドラ『ばけばけ』
現在放送中の2025年度後期朝ドラ『ばけばけ』
すべての画像を見る

取材・文/木下未希