“キャリア史上最長の執筆量”を、子育てと両立する日々
ドラマチックなストーリー展開ではなく、“ささやかな日常”を丁寧にすくいあげる作風に定評のある脚本家・ふじきみつ彦氏。広告代理店勤務を経て、2005年に30代後半で脚本家デビューしてから、劇団公演や子ども向け教育番組のほか、NHKよるドラ『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』などを手掛け、朝ドラは今作が初挑戦となる。
――今作は、ふじきさんのキャリア史上、“最長の脚本執筆量”だと思いますが、苦労されている部分はありますか。朝ドラ脚本への率直な感想を聞かせてください。
ふじきみつ彦(以下、同) 僕が今まで書いてきた脚本は最大でも「15分×32回」のNHK夜ドラで、民放ドラマで定番の「1時間×12回」ですら書いたことがなかったんです。だから最初に朝ドラのご依頼をいただいたときは、経験のさらに上を行く仕事なので、「大変になるだろうな…」と思いつつ、「頑張ろう」という気持ちでした。
書くこと自体は苦ではないですが、僕は先を見通して書くのが苦手なタイプなので、その部分では苦労しています。だから、書きながらスタッフのみなさんと「ああでもない」「こうでもない」と議論を交わし合っています。
――現在はどのような1日のサイクルで過ごされていますか?
午前4時に起床して2時間ほど執筆して、子どもが起床する午前6時から子どもを保育園に預ける午前8時過ぎまでは“お父さんの時間”に転換しています。預けたあとの午前9時から午後5時半までは再び執筆の時間に充てて、子どもが保育園から帰ってきて寝るまではまた“お父さんの時間”を過ごしています。執筆時間が足りない場合は午前2時に起きて執筆することもありますね。
――子育てをする前と今とで、執筆スタイルにどのような変化がありましたか?
僕は書くのがすごく好きなので、書く時間があればあるほど嬉しいタイプです。だから子どもが産まれた最初の半年間は「なんでこんな書く時間が取れないんだ…」と苦しんだこともありました。でも状況的に自分が変わるしかないと思い、子どもがいるときは仕事をしないと割り切って、子どもの就寝後や保育園に預けている時間に執筆するように決めました。そしたら逆にその時間に集中するようになって、仕事量は変わらず、執筆に充てる時間は半分になったけど、やってみたら案外できるもんだなと今は思っています。













