「観光産業」が成長戦略から消えた高市内閣
一部報道では中国人観光客の渡航自粛の影響は小さいなどと言われている。しかしそれは東京や京都など人気の観光地だ。中国人の宿泊者数が大部分を占め、宿泊者数そのものが全国平均よりも少ないエリアは静岡県、和歌山県、兵庫県、鹿児島県など他にもある。
今回の渡航自粛の騒動を受けて、SNSでは「中国人観光客によるオーバーツーリズムが解消される」などと、肯定的な意見も散見される。しかし、この問題は混雑する観光地よりも、目立たない観光地が苦境に立たされることになるのだ。
さらに、観光業は中国リスクを回避することよりも、国内の観光客獲得に改めて目を向けなければならない。日本においてもエコツーリズムが注目を集めるようになった。自然や歴史、文化など地域固有の資源を活かした観光のことだ。観光客が押し掛ける場所ではなく、意外な場所の非日常体験を楽しむことに特徴がある。
ただし、地方自治体や民間企業だけでできることは限られる。安倍政権下で空港の発着枠、免税店を拡充して海外観光客の増加に弾みをつけたように、政府の後押しが必要だ。
高市内閣の成長戦略には、「観光立国」や「地方創生」というキーワードは出てこない。日本の観光業が置き去りにされないか心配だ。
取材・文/不破聡













