中国依存から脱却すればいいと口で言うのは簡単

小野田紀美経済安保相は、11月18日の記者会見で中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけたことに対して、「気に入らないことがあれば経済的威圧をしてくる」「観光に対してもリスクではあるので、リスク低減を日頃から考えながら経済を回していけたらいい」と語った。

中国は福島第一原発の処理水の海洋放出に伴い、2023年に日本産水産物の全面禁輸措置を講じた。こうした歴史を見ても、観光業が過度な中国依存を控えるべきだというのは頷ける。そんななか、高市総理の発言で再びリスクは顕在化した。

APEC首脳会議前の控室で中国の習近平国家主席(左)と挨拶する高市首相(本人Xより)
APEC首脳会議前の控室で中国の習近平国家主席(左)と挨拶する高市首相(本人Xより)

しかし、奈良県はアジア圏に依存しないインバウンド観光地づくりを本格化していたのだ。

奈良を訪れるアジア圏の観光客が「自然や風景の見物」「伝統的日本料理」を重視する一方、欧米圏の観光客からは「説明の充実度」が影響する「歴史的建造物」「日本庭園」の見物が上位を占めていた。

そのため、奈良県は日立製作所と共同で県内の周遊・滞在観光を促進するため、AIで旅程を作成するWEBサービス「ならいこ」を2024年12月にリリースしている。欧米圏の観光客を中心として「ローカル文化体験」が人気であることを背景に、高付加価値なインバウンド観光地づくりを推進している。

しかし、観光産業は外からやってくる人を受け入れるビジネスである。観光客の意向や行った人の口コミ、観光資源あってのものなのだ。水産物の輸出のように、取引先を変えて何とかできる産業ではない。奈良県のような取り組みが成果を出すにはどうしても長い時間がかかる。

リスクを回避したいのはやまやまだが、全国的に観光客の少ない観光地や宿泊客が増えない現状に苦しむホテル・旅館は、何とか売上を確保しようと旅行代理店などに営業をかけ、団体客を獲得するほかないのだ。