儲けたお金は誰の財布から?

「金は天下の回りもの」とはよく言ったものだ。お金は常に誰かの手元から、別の誰かの手元へと移動している。では、投資で得られる利益は、いったい誰の財布からやってきているのだろう?
この問いは、投資とギャンブルの違いを見極める鍵になる。

たとえば株式投資で利益が出る場合、そのお金は主に2つの財布から来ている。

(1)企業の財布
トヨタ株に投資したとする。トヨタは、自動車という移動に便利な商品を作り、顧客に提供することで利益を得ている。その一部が配当として投資家に還元される。これは「顧客の役に立った報酬」であり、社会に新しい価値を生んだ結果だ。

(2)他の株主の財布
企業が新たな価値を生まなくても、噂や思惑だけで株価が上がることがある。そのタイミングで株を売れば、利益は出るが、これは後から来た別の投資家が高く買ってくれたからにすぎない。新たな株主がお金を払ってくれただけだ。

もう少し複雑なケースもある。たとえば、トヨタが次世代の電気自動車を開発したというニュースで株価が上がった場合だ。これも投資の利益の出所は「他の株主の財布」だが、そこには「将来の顧客の役に立つかもしれない」という期待が込められている。この期待が実現すれば、(1)と同じように社会に新しい価値を生んだ結果と言える。

写真/shutterstock 写真はイメージです
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いずれにしても、株式投資の利益は、「企業の財布」と「他の株主の財布」の2箇所から来ている。そして、「企業の財布」から来るお金は、誰かの役に立った結果として生まれた報酬だ。

この構造は、株式に限らず、すべての投資に当てはまる。投資で得られる利益の出どころは、基本的に2種類しかない。

・誰かの役に立ったことに対する報酬
・他の投資家をあてにしたお金

この2つの違いを見抜くことが、「投資かギャンブルか」を見極める鍵になる。