健全な投資とギャンブルの見分け方

私たちは日々の生活で、食料や医療、住宅など、自分の役に立つモノやサービスにお金を支払っている。裏を返せば、「誰かの役に立った報酬」の多い投資は、私たちの暮らしを支え、社会の維持や発展に貢献している。これが投資の本来あるべき姿だ。

一方で、利益の大部分が「他の投資家をあてにしたお金」である投資は、新しい価値をほとんど生み出してはいない。投資家同士でただ、お金の奪い合いをしているのに近い。こうした投資は、ギャンブル的な要素が強い。

この視点を、いくつかの投資に当てはめて考えてみよう。

たとえば、不動産。

家賃収入は入居者の生活に貢献した対価だ。この家賃収入を目的にするなら、社会的にも健全な投資だと言える。そうではなく、「将来の値上がりが期待できます」と勧められた不動産投資は、「誰かが今より高く買ってくれること」に賭けているだけで、ギャンブル性が強い。

銀行預金も同様の視点で考えられる。

預けたお金は、企業や個人への貸し出しに使われ、新しい工場や住宅が作られる。その結果、新製品や快適な住環境が生まれる。この流れで得られる預金の利息は、「誰かの役に立った報酬」に他ならない。ここには「他の投資家をあてにしたお金」は一切含まれていない。だから、銀行預金はギャンブルとは無縁だ。

では、仮想通貨やFXはどうか。

これらも投資と呼ばれるが、その利益の多くは「他の投資家が高く買ってくれること」に依存している。市場に流動性をもたらすという一定の役割はあるものの、新しい価値を直接生み出すわけではない。その意味では、ギャンブル的要素が極めて強い。

投資の利益には2種類ある(『お金の不安という幻想』より引用)
投資の利益には2種類ある(『お金の不安という幻想』より引用)

ここまでを整理すると、投資の健全性を見極めるシンプルな質問が導き出せる。

「その利益は、誰の役に立った報酬なのか?」

この問いにうまく答えられない投資や、生活者としての自分が「お金を払いたくない」と感じる商品や事業への投資であれば、警戒した方がいい。詐欺の可能性さえある。

値上がり益ばかりを強調する投資は、「自分より高く買ってくれる誰か」が現れなければ成立しない。派手な成功談には、他人の財布をあてにした投資の要素が含まれている場合も多い。

そして、他人の財布を狙うということは、あなたの財布も誰かに狙われているということだ。

投資を始める前に、一度考えてみるといいかもしれない。

「自分はギャンブルをしたいのか? それとも健全な投資をしたいのか?」

写真/shutterstock 写真はイメージです
写真/shutterstock 写真はイメージです

ギャンブル的な投資を一概に否定するつもりはないが、それを健全な投資と混同するのは危険だ。

今の日本では、一発逆転を狙って、ギャンブル性の高い投資が好まれる傾向もある。ある意味、それも仕方のないことなのかもしれない。その背景には、経済構造の変化や、格差の固定化といった深刻な問題が横たわっている。