「僕の野球人生は不完全燃焼」

――プロ8年でユニフォームを脱ぐことになり、その後は一般職をいくつか経験。現在は保険代理店で働きながら、ベースボールアカデミーの講師兼取締役社長やBCリーグ所属の「山梨ファイヤーウィンズ」の投手コーチを務めているそうですね。

はい。あと草野球もやってます。子供たちを教えるのに自分の体が動かないんじゃ説得力がないので。

ただ投げると肩が痛いので痛み止めの注射を打ってます。

――草野球をそこまでしてやる人ってなかなかいない気が……。野球を嫌いになってもおかしくない経歴なのに、いまだに野球に携わる理由は?

僕の野球人生が不完全燃焼で終わったからだと思います。きっとプロでやりきってたら、もう野球はやってないんじゃないかな。もちろん好きじゃなければ痛み止めを打ってまでやってないと思いますけど。

2年目から楽天は野村克也が監督に就任。一場についてマスコミへよくボヤいていた野村だが、「自宅に食事を招待されるなどかわいがってもらっていました。サッチーさんにも『あんた、何なのあのピッチングは。もっとがんばんなさいよ』とすごく気にかけてもらいました」
2年目から楽天は野村克也が監督に就任。一場についてマスコミへよくボヤいていた野村だが、「自宅に食事を招待されるなどかわいがってもらっていました。サッチーさんにも『あんた、何なのあのピッチングは。もっとがんばんなさいよ』とすごく気にかけてもらいました」
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――いろんな事情があってプロではやり切れなかった悔しさが今でもあるということ?

でも、それを言ったらもともとの原因は大学時代の自分の甘さ。自分の置かれた立場を人のせいにしちゃいけない。人によっては“運が悪かった”と言ってくれるんですけど、その運を引き寄せたのは自分。そして、それを打破できなかったのも自分なんで。

アカデミーを受講している子供たちには技術面だけでなく、どんなときも人のせいにしちゃいけないということも伝えていきたいと考えています。

――後編では、一場さんの引退後のセカンドキャリアについて伺います。

(後編に続く)

取材・文/武松佑季
撮影/榊智朗