逆回転、すなわち円高への転換の足音が近い
為替も相場も、政治の脈拍を映す鏡だ。円は一時152円まで売られたが、米国金利の頭打ちとともに下げ止まり、いまは次の方向を探っている。長く続いた円安の流れは終盤に入り、逆回転、すなわち円高への転換の足音が近い。
私はこの円高を、単なる為替の反動ではなく、政治と経済の自浄作用だと思っている。円安バブルの十年は、政治の空洞を覆い隠すための幻想の時間だった。
だが、通貨は嘘をつかない。政治が空手形を乱発し、財政も金融も膨張しきったところで、ようやく市場は現実に戻ろうとしている。
いま、金と銀がともに史上最高値を更新し続けていること自体、通貨そのものへの信頼が揺らいでいる証左である。金は国境を越えて価値を持つが、通貨は国家の信用に依存する。
ドルという基軸通貨の足元が揺らげば、その影響は円のようなローカルマネーに最も早く表れる。円安や円高という表層の変動の背後では、すでに「通貨という制度」そのものの信認が試され始めている。政治が現実から目を背け、金融政策が延命策に傾けば、通貨の信用は静かに削られていく。