中国人移住問題のデマと真実
SNSの急速な普及によって情報が氾濫し、昨今は何がフェイクで何がリアルか区別がつかなくなってきている。
選挙においてもSNSでまことしやかにデマが流されると、それを事実だと信じ込んだ人たちにより、今度はそれに尾びれがついて、またそのデマが誇大化されて広まっていく。
デマか真実かを「見極める目」については、我々日本人は急速に、そして確実に退化の一途を辿っているように思えるのだ。近い将来、事の真偽はAIに判断してもらうようになるのではないか。
海外でAIコンサルタントをしている知人によると、すでに人間を騙すためにフェイク情報を流すAIもできているようで、時代はどんどんAIに翻弄、支配されていくのかもしれない。
下手をすれば、そうしたことが発端になって戦争すら起こりかねない。実際に過去の戦争というのはデマの応酬によって引き起こされることが多かったといわれている。
そのためにも我々は読解力、考察力、洞察力を常にトレーニングしておく必要があるように思う。
筆者は以前、中国人の移住問題について、日本の優れた社会保障目当ての移住者が多い書いたが、いつのまに尾びれがついて生活保護受給者の1/3は外国人であるという噂がSNSを発端に広がった。しかし、これは明らかなデマだ。
厚生労働省のデータによると2023年度(2023年4月〜24年3月)における生活保護受給世帯は全国で約165万世帯あり、このうち世帯主が外国籍(日本国籍を持たない世帯主)なのは 約4.7万世帯なので、全体の約2.8〜2.9%に過ぎないのだ。
生活保護97%以上は日本国籍世帯、外国人世帯は3%未満
つまり、日本の生活保護の 97%以上は日本国籍世帯であり、外国人世帯はわずか 3%未満だというのが真実だ。
とはいえ4.7万世帯、人数にすれば10万人前後の移住外国人が生活保護を受けているのは事実で、それにかかる費用は概算でも1000億円前後かかっていることもまた、紛れもない事実なのだ。
とりわけ日本へ移住を希望する中国人が注目する、日本の社会保障制度についてもSNSからの噂が発端になっている節はある。
第一に「医療制度にタダ乗り」説だ。それは「日本の経営管理ビザを取得すれば公的医療を格安で受けられる」といったものだ。
実際にそうした内容の動画が中国で拡散され、中国人の関心を集めている。上海などでは日本の医療機関に中国人が増加したという報告もあるが、日本の医療保険は国内限定であるので原則、日本人向けの医療機関であっても上海では使用できない。
例外的に補助が出る場合があるが、その手続きはかなり複雑なのでSNSのフェイク、誇張された噂に多くの人が惑わされているといえるであろう。