自公破局で、本当に損をするのはどっちだ
国政では共倒れ、地方ではそれぞれが復活。このねじれた構図の中で、私たちは冒頭の問いに立ち返らねばならない。「自公破局で、本当に損するのはどっちだ」。
その答えは、自民党でもなければ、公明党でもない。本当に損をするのは、「自公両党の、小選挙区で当選してきた国会議員たち」である。
彼らの多くは、連立という共依存システムの上で、安穏と当選を重ねてきた。自民党議員は公明党の組織力に、公明党議員は自民党の推薦に、それぞれ依存することで、自らの議席という玉座を守ってきたのだ。
しかし、そのシステムは崩壊した。彼らは今、何の援護もない裸の状態で、選挙という荒野に放り出されたのである。次の選挙で、これまでと同じように当選できる保証はどこにもない。
自民党の閣僚経験者も、公明党の代表、現職大臣も、次の選挙結果によっては、ただの人となる可能性がある。多くの「裸の王様」たちが、いとも簡単に玉座を追われることになるだろう。
「創造的破壊」となる可能性
この光景は、私たちに日本の選挙制度が抱える構造的な問題を突きつける。多様な民意を切り捨て、二大政党への集約を促すはずだった小選挙区制は、結果として、自公連立という奇妙な共依存関係を26年間も固定化させてしまった。
それは政治の安定という側面もあったが、同時に、政策的な妥協と理念の形骸化を常態化させ、政治全体のダイナミズムを奪う結果にも繋がった。
今回の破局は、その歪んだ構造を破壊する、痛みを伴う契機となるかもしれない。議席を失う多くの国会議員にとっては悲劇に違いない。
しかし、日本の政治全体にとっては、長すぎた停滞を打ち破り、新しい秩序を生み出すための「創造的破壊」となる可能性を秘めている。本当の損得が決まるのは、これから始まる新しい政治のゲームの結果次第なのである。
文/小倉健一