「麻生さんの頭の中だけで人事をやるからこうなる」

ヒートアップする公明党をなだめ、話し合いができるような人材も、高市氏の周囲には見当たらなかった。斉藤氏をはじめ、自民党内で公明党幹部との付き合いが多かったのは、「総裁選で小泉氏を支援した議員が中心だった」(自民党関係者)からだ。

「麻生さんの頭の中だけで人事をやるからこうなる。決選投票で高市氏を支援して主流派に戻った茂木敏充元幹事長(70)の外相起用案も報じられましたが、茂木氏も幹事長時代に、10増10減に伴う候補者調整などで、公明党と溝が生まれた過去がある。

他党とのパイプ役が期待される国対委員長には、梶山弘志元経産相(69)が起用されましたが、国対経験がゼロで、人脈面での懸念がある。総裁選で小泉進次郎農相(44)を支援した御法川信英前国対委員長代理(61)にサポート役を頼んでいるそうですが……」(前出・自民党衆院ベテラン)

1999年10月、自公連立政権が発足(公明党HPより)
1999年10月、自公連立政権が発足(公明党HPより)

最終的に高市氏が泣きついた先は、小泉氏の後見人・菅義偉元総理(76)だった。菅氏は創価学会の佐藤浩副会長との太いパイプを持つことで知られている。

「佐藤浩副会長が人事などにすごく怒っていたと聞いています。最終的に話し合いをできるのは菅氏しかいない。高市氏も10月9日に菅氏と面会したが、菅氏は周囲に『全く関わるつもりがない』と漏らしていた」(菅氏周辺)

公明党の支持母体・創価学会
公明党の支持母体・創価学会

ただでさえ少数与党となっている自民党。今回の公明党の連立離脱により、今後はさらに混迷しそうだ。自民党が多数派工作を成功させ、国会の首班指名選挙で、高市氏が総理に選出できるどうかが焦点だ。

総裁選直後の10月4日に、高市氏は国民民主党の玉木雄一郎代表(55)と面会した。いまや高市氏の後ろ盾となっている麻生氏も、10月6日に、同党の榛葉賀津也幹事長(58)と会談するなど、国民民主への急接近がみてとれる。

さらに麻生氏は8月には参政党の神谷宗幣代表(47)とも国会内で会談している。

高市新体制のメンバー(自民党広報Xより)
高市新体制のメンバー(自民党広報Xより)
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前出の高市氏に近い自民中堅は「公明党の離脱は、中長期的には政界再編に繋がる可能性もある。自民党が、もう一度保守政党としてやっていくチャンスかもしれない」と指摘するが、政局は不透明さを増している。

取材・文/ 河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班