会議の回数を減らそうと意見をした前任者の課長の末路
営業部門に異動してきて日が浅かった頃、久本さんは部長の言葉を額面通りに受け取り、会議で自分の意見を言っていました。
すると決まって部長が、「久本君は、営業に来たばかりでわからないだろうが、それではうまくいかない」と言って、30分以上も指導が入ったそうです。さらには、他の参加者に「久本君の意見をどう思う?」などと一人ひとりに聞き、部長の意見に無理やり“賛同させられる”ような雰囲気でした。
久本さんは異動後しばらくして、他の課長と会議の件について話しましたが、全員が会議を非効率であると感じていました。また、会議で部長が他の人の意見を素直に聞いているように見えるときでも、実際には自分の考えに刃向かっていると捉え、後で反撃する場合があることもわかりました。
賛同以外の意思表示をすると、気が済むまで話が続くので、なるべく会議を長引かせずに済むよう、みんなで気をつけていたということです。
久本さんの前任者の課長は、会議の回数を減らし、オンライン参加も認めるべきだという意見を部長にしたところ、嫌われてしまい仕事がやりにくくなったということです。稟議書が部長のところで止まり、予算は営業一課だけが難くせをつけられ、人事評価も下げられ結果的に転職してしまったそうです。課長が部長の方針に反対すると、結果的に課のメンバー全員の成果にも影響する構図になっていました。
社内でF部長の専横が許されていたのには理由がありました。次期社長と目される役員と部長は、付属中学から大学まで同じ部活の先輩(役員)後輩(部長)の間柄で、部長はその役員の口利きで入社していたのです。
何をしても部長が異動になることはないので、以前からいる他の課長や部下は、久本さんには会議で部長に余計なことは言わず、無駄に会議を長引かせないでほしいと願っていたようです。
久本さんは、部長率いる営業部門の特性はよくわかったものの、これからも毎日のように部長独壇場の会議が続くと思うと、転職した前任者の気持ちがよくわかったそうです。そしてなにより、このような状態では、業績が伸びていく未来が描けませんでした。
久本さんは筆者のところへ相談にきましたが、そのときにはすでに転職も決意している様子でした。社内の異動があったばかりなので、この環境から逃れるのは転職以外にないと思ったそうです。