変革の兆しを拡げる

すでに日本でも、多くの女性たちが声を上げ、行動を重ね、確実に社会を変え始めている。たとえば「生理の貧困」問題を見てみよう。

月経に関する支出は女性だけが支払うリプロの負担の1つであるにもかかわらず、これまで本人負担が当たり前とされてきた。

しかし、新型コロナウイルス感染症の流行で経済的に困窮する学生が増える中、月経に関する啓発活動を行う若者グループが海外で社会問題として注目されていた「生理の貧困」、すなわち生理用品などを購入できない女性たちがいる、という問題を国内でも可視化した。

この問題は急速に共有され、現在では多くの学校や公共施設で生理用品の無料提供が実現している。

また、「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」は10万筆を超える署名を集め、この問題に対する注目度を知らしめた。2022年末から始まった緊急避妊薬に関するパブリックコメントにも4万6000件以上の意見が寄せられ、そのほとんどが薬局販売に賛成だった。

これらの声が後押しとなり、2023年11月から全国145カ所の薬局での試験販売が始まり、その後も試験販売の継続が決定した。医師の処方箋なしで薬局で入手できる範囲はまだまだ限定的だが、女性たちの粘り強い活動が少しずつ実を結んでいる。

2025年5月には、緊急避妊薬の「ノルレボ錠」を製造するあすか製薬が、この薬を市販薬として製造販売できるよう、厚労省に申請していたことも明らかになった。

日本ではノルレボ錠として流通している緊急避妊薬レボノルゲストレル
日本ではノルレボ錠として流通している緊急避妊薬レボノルゲストレル
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経口中絶薬についても、市民の声やさまざまな運動が承認の流れを促進し、2023年に「メフィーゴパック」が発売されるに至った。

2024年5月に発表されたこども家庭庁研究班の中絶実態調査では、承認から約半年の間に服用した435人の中に重篤な合併症は確認されなかったことが報告され、研究代表者で日本産婦人科医会の中井章人副会長は「より多くの施設がこの薬を使えるようになることが(受診者にとって)メリットが高いのではないか」と、利用者目線に立った見解を表明した。

WHOの国際基準に比べればまだ制限が多いものの、女性たちの声が少しずつ医療現場にも届きつつある。