世界から数十年遅れている日本の中絶事情
現在、日本では、子宮に器具を挿入して内容物を掻き出す「掻爬(そうは)法」が中絶手術の主流になっています。子宮の内容物を吸引する「吸引法」もありますが、あまり普及はしていません。
日本で掻爬法が行なわれている理由は様々ありますが、その一つとして、日本の医師の技術力の高さがあると考えます。
掻爬法による手術(子宮内容除去術)はBlind Surgeryといって、基本的には医師の僅かな手の感覚に頼って行うのですが、日本の産婦人科医はとても技術力が高く、妊婦の体への負担を最小限にこの手術を行うことができます。この辺りの事情は海外の医療現場とはかなり異なるのではないでしょうか。
吸引法の方が女性の体に負担が少ないのは確かですが、中絶が完了したことが目で見て分かりやすいというのも、掻爬法がいまだに主流なことの原因の一つです。内容物を除去し、出血が止まれば中絶が完了したということなので、より確実に中絶を行うことができるという意味で採用されていると感じますね。
実は、WHOでは外科的方法で中絶を行う場合は、掻爬法よりも吸引法を推奨しています。そのため、日本において掻爬法が主な施術方法というのは、世界の潮流に逆らっていると言えるでしょう。それを受けて、2021年7月に厚労省は「人工妊娠中絶の安全性について〔依頼〕」として、人工妊娠中絶・流産手術については、WHOの方法を推奨するとの課長通知を発出しています。