脳は10歳までどんどん大きくなって、その後は萎んでいく? 腸から生まれた脳の成長メカニズム
私たちの脳は生まれてから10歳ぐらいまではどんどん大きくなる一方、その後は緩やかに萎んでいくという。25歳をピークに完成する脳の発達メカニズムとは?
脳神経外科医の東島威史氏が脳への刺激と癒しについての最新知見を初めて語りつくした『不夜脳 脳がほしがる本当の休息』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
不夜脳 脳がほしがる本当の休息 #1
脳は「削ぎ落とされて」完成する
音程やリズムを理解する右側の側頭葉の発達は比較的早く、胎児の頃からある程度発達が進んでいると言われている。左側の「音の意味≒言葉」を理解する領域は生後ゆっくりと発達していく。
頭頂葉には「感覚野」があり、「触覚刺激」により発達していく。触った感触はもちろん、手足を動かしてどのくらい動いたかなどの「関節位置覚」なども、動かせば動かすほど急速に発達していく。
そして最後に発達するのが「前頭葉」だ。まずは前頭葉の中でも一番後ろにある「運動野」が発達し、筋肉を動かし始める。それより前には「計画」、「予測」、「共感」といった、人間ならではの「高次脳機能」が「眠って」いる。
運動野まではある程度自然に発達していくが、それより前の前頭葉の発達には、生きていく中での「刺激」が不可欠だ。
最後に完成する前頭葉は、動きと情緒を司る部分だ。3歳から思春期にかけて発達を続け、完成するのは25歳くらいだと言われている。
どの段階の発達においても脳はさまざまな機能を獲得していくが、それは「細胞の増大」ではない。大量に盛り付けた朝食ビュッフェが選び抜かれたものに変わるように、「必要ないものを削ぎ落とす」ことで脳は完成する。丸だけの石を用意して削っていき、体積を減らして美しい彫刻を作り出すように脳は完成するのだ。
そのため、10歳くらいまでは脳はどんどん大きくなるが、その後、ゆるやかに萎んでいく。いらないものを削る「仕上げの段階」に入るということだ。
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筋肉を過剰につけすぎるのではなく、美しくバランスのとれた体を目指す「フィジーク」という競技があるが、脳はまさにそれだ。いらないものが削ぎ落とされることでバランスの美しい脳になっていく。
2025/9/24
1,650 円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4763142481
「寝ないと脳に悪い」は、ウソだった?
“脳の老廃物”は「起きていても」掃除できる――。
脳神経外科医による、「脳の休息」の常識を覆す1冊。
「健康な脳には睡眠が必要」と一般的に言われますが、
実は、睡眠と脳の活性化には明確な因果関係がないことが分かってきました。
「体の維持」には睡眠は重要ですが、
「脳の健康」には休息より“継続的な刺激”こそ重要――。
そう語る東島医師は、脳神経外科医として、
日々、人の「脳波」を見つつ、大学に研究員としての籍も置く医師。
臨床と研究との二足のわらじ生活のなかで
◎「脳の老廃物除去に必ずしも睡眠は必要なく」
◎「起きているときでも脳は老廃物を除去できる方法がある」
ことを見つけます。
24時間営業のコンビニが閉店せずとも清潔さを保つように、
人間の脳も「店を閉める」ことなく、老廃物は除去でき、機能を維持できるのです。
脳の老化に対抗するために重要なのは睡眠以上に、
「適切な刺激」を継続的に与えること。
では、その「適切な刺激」とは!?
まさに、脳への刺激と癒しについての最新知見を初めて語りつくします。
睡眠中も、脳は眠らない。
ゴミを掃除し、棚の在庫を補充し、明かりを灯し続ける――。
あなたのために24時間営業する「不夜脳」のために、
脳神経外科医が見つけた「本当に脳にいいこと」。
脳は、何歳からでも鍛えられるし、脳は年齢に負けない。
生活の質を上げ、仕事のパフォーマンスを上げる具体的な方法の数々が、
お読みいただく方にとって
あたらしい「刺激」となること請け合いです。
【目次より】
日々、脳と向き合う気鋭の脳神経外科医が初めて語る、
脳を活性化させる「刺激」と「癒し」の新常識!
◎「脳のために睡眠が必要」は本当か?
◎「眠り」の役割と「不夜脳」
◎脳の掃除は「寝ていないとき」でもできる
◎認知症と睡眠不足の「都市伝説」
◎脳は体を「寝かしつける」保育士
◎脳は刺激不足で老化する
◎たっぷり眠ると「集中力」が上がる本当の理由
◎「脳疲労」の正体はバランスの偏り
◎記憶に必要なのは「忘却の能力」のほうだった