腸管の先っぽにできた脳
「腸管の先っぽにできた脳」という表現をご存じだろうか?
進化論・発生学から出てきた比喩で、脳の起源や構造、さらには脳と腸の深い関係を示す言葉でもある。
原初のアメーバには脳がなかった。その後、初期の多細胞生物、たとえばヒドラなどの刺胞動物に進化していく。ヒドラには脳がないが、神経系は腸管の先っぽ「口の周辺」に集中して発達した。
つまり「食べる」という生命維持において最も重要な部分に、神経というセンサーを作ったということだろう。会社でも重要プロジェクトに精鋭を配置するように。
神経というセンサーは、餌があれば感じて見つけ、チャンスがあればすかさず食べる。さらに神経系が刺激に反応するなかで、やがて判断に近い選択行動が生まれた。これが「脳」の始まりだ。
より高度な生物へ進化する過程で、腸(消化管)の前方に脳、つまり神経細胞の集積ができていった。
餌という「刺激」に対応する精鋭として誕生したのが脳であり、覚醒の機能が脳である。このことからも「脳は刺激を処理するための臓器」という説はうなずけるだろう。