南極に長期赴任した人の脳は縮んでいた
孤独は脳に器質的な変化すらももたらします。
脳のMRI画像を使った研究では、社会的に孤立した人は記憶力や反応といった認知能力が低く、脳の多くの領域で灰白質の体積が少ないこともわかりました。
灰白質の体積が少なかった部分には、音の処理や記憶に関わる側頭葉、注意力や複雑な認知タスクに関与する前頭葉、学習と記憶に関わる海馬など、認知能力と深くつながる領域が含まれていそうです。
2019年に南極に滞在する遠征隊員をサンプルに行われた孤独に関する研究があります。これは、9人の南極に滞在する遠征隊員(14か月滞在)と、彼らの脳を比べたものです。
南極というのは超がつくほど孤立したところ。特に基地局に駐在する人は、その人たち以外とのつながりはありません。もちろん、家族と離れての駐在です。
そんな南極に14か月滞在した駐在員の脳を調べたところ、記憶を司る海馬は約7%小さくなり、また脳細胞の再生を司る脳由来神経栄養因子(BDNF)は45%減少していたそうです。
また、意思決定や問題解決を司る前頭前野の重量減少も一部に見られました。
なお、この現象は、南極から帰って1か月半の時点でも続いていたそうです。
また、2022年に発表された、平均21歳の1336人を対象に、脳の画像をもとに孤独を研究したものがあります。
ここまで大規模な孤独の研究はあまりないので、とても興味深いです。
これによるとアンケートの結果、孤独だと答えた人は、孤独でないと答えた人に比較して、社交性を司る前頭葉の左側及び頭頂葉の上部の活動が減少していたことが発見されました。
つまりは、孤独な人は、社交性を司る部分の脳を使わないため、その活動が減少するのです。