大脳は後ろから前に発達する
人間などの哺乳類には脳が備わっているが、胎児の脳はどうできていくのだろう?
残念ながら、「必要なものを必要なだけつくる」という効率の良い成り立ちではない。最初はでたらめで、「質より量!」とばかりに、とにかくやたらと細胞が増えていく。
ホテルの朝食ビュッフェをイメージしてほしい。
あつあつの卵料理もサラダもチャーハンも肉も焼きそばもプリンもクロワッサンも、「とにかく目についたものをお皿にてんこ盛りにする」というタイプの人がいるが、まさにあんな感じだ。
だが、「多すぎる料理=良い朝食」ではない。
でき立ての熱いオムレツの隣のサラダはしんなりしてしまうし、チャーハンと焼きそばとクロワッサンを一度に食べたら胸焼けする。そこで大人になるにつれ、いらないものは削ぎ落として、「おいしい朝食」にふさわしいものだけ厳選するようになる。
脳も同じだ。まずは大量に細胞を増やしてから、いらないものを削ぎ落としていく。細胞はやたらと量だけあるより、必要なものが必要なだけあったほうが、機能を獲得しやすいのだ。
先ほど「重要プロジェクトに精鋭を配置する」と述べたが、いくら精鋭であっても30人もいたら、意見をまとめるだけで一苦労となり、かえってプロジェクトは混乱するだろう。
こうして胎児期にでたらめに細胞が増えながら、脳は出生後、後ろから前へと発達していく。
「後頭葉→側頭葉・頭頂葉→前頭葉」──こんな順番だ。
後頭葉には、目に映るものを処理する「視覚野」があり、生まれて初めて「光」刺激が入ったときから発達が始まる。
次に発達するのは「側頭葉」と「頭頂葉」だが、これははっきりとは順番はつけられない。右と左でも発達の早さが違うからだ。