ものまね芸は「黙認」が一番?
令和に入ってからは、ものまねがより本人の目に届きやすいSNS時代が到来し、「公認」の二文字は存在感を強めた。2019年には一生交わることがないと思われた、ものまねSMAPのメンバーがABEMAの『7.2 新しい別の窓』で新しい地図の3人との邂逅を果たし、2020年正月に放送された『ドレミファドン!』(フジテレビ)では、ホリが木村拓哉と18年越しの初対面で号泣。
2023年には『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』(フジテレビ)で「〇〇だらけのものまね王座決定戦」という企画が開催され、堂本剛や倖田來未が自身のものまね芸人たちを審査したことも話題を呼んだ。
長年ものまねをしてきた芸人が、ご本人と共演するのは感慨深いものがある。とはいえ、やはりものまねする側から「公認お願いします!」と求めるシーンを見るのはこそばゆい。
真似される側が公認することで懐の深さを示すことはできても、番組や企画の都合上、そうそうNOと言いにくいのも事実だし、たとえ公認をしなくてもそのネタが封印されるわけではない。
2015年7月19日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)で松本人志が「ものまねの人もすごい誇張してものまねして…、『ファンです』って、あのやり口はそろそろ、もうええかなって思わないですか!?」と語ったことがあるが、その真意は「誇張するな」ということではなく、「ファンです」を免罪符にするなということだろう。
今年9月の集英社オンラインのインタビューでも、原口あきまさはこう語っている。
「最近のものまね芸人は“ご本人公認”を求めすぎているんじゃないかとも思うんですよ。みんな『公認いただきました』って喜んでいるけど、僕は『お前、なに俺の真似やってくれてんだよ!』と言ってくれるほうがやりやすい。
公認をもらうと守りに入っちゃうし、下手にスベれないですから。もしご本人にお会いしたら土下座してそれっきり。あとは、なるべく会わないようにこそこそ生きていくのが一番なんです」
ものまね芸人が、ご本人も気づいていないクセや特徴、性格を誇張して表現できるのは、やはり斜めからのものを見る、批評的な目を持っているからだろう。それはリスペクトの有無とはまったく別の問題である。
炎上したEXILE・ATSUSHIそっくりさんの一件について、「ご本人へのリスペクトが足りない」と語る意見が散見されたが、そもそも「公認」などというなんの効力も持たない言葉(営業のチラシには「公認」と打てるが)に振り回されることなく、自らの芸を磨き続けることこそが本当に大切なことなのではないだろうか。
文/森野広明