テレビの「ものまね番組」に出なくなった理由
かつてものまね界には、同じものまね芸人が局をまたいでものまね番組に出演することができないという、暗黙のタブーがあった。
「以前、僕が収録中に流した涙が編集で思わぬ形で使われてしまったことがあったんです。ものまね番組の決勝を戦って、対戦相手が優勝したんですが、その本筋とは関係のないところで、コロッケさんがみんなの前で『ものまね芸人もこんだけいるからね、大事にしてあげてほしい』って熱い言葉をくれたんですね。『原口とかもがんばってるしさ』って、名前も出されちゃって、それにグッときて泣いちゃった。
でも、オンエアを見たら、その涙が『優勝者決定、おめでとう!』のあとにポンと挟まれていて、『ああ、これ意味がぜんぜん変わっちゃったな』と思いました」
「芸人が流す涙には必ず意味がある」という原口にとって、ただの演出にすり替えられることは耐えがたかった。
当然、そこに至るまでにも、理不尽の積み重ねがあった。過去には、明石家さんまのものまねに必要な入れ歯を持ち出せないように、局で厳重に保管されていたこともあったという。
「みんながそうは思っていないかもしれないけど、ものまね芸人がちょっと雑に扱われた時期があったんです。少なくともものまね芸人さんが『僕たち、いる意味あるのかな』と思ってしまった。
それで、いろいろと相談を受けていたんですね。1分半〜2分程度の持ち時間のなかで、なるべく笑いを入れながら担当ディレクターさんと何度も打ち合わせして、やっと通ったネタが、オンエアでは意味が伝わらないくらい途中で雑に編集されていたりして。
トークで面白いくだりがあっても、もちろん使われません。初めてその芸人を見た人が好きか嫌いかを決めるのはその一発でしかないのに、これでは次の世代が潰れてしまうなと思いました。だから、『メディアも大事だけどライブかもしれない』と思って、ものまね番組を出るのやめてライブに動き出したんです」