さらなる転院、ICUへ

重症急性膵炎は膵臓だけでなく、体のあちこちに影響が出る病気だ。僕の場合はまず腎臓がダメになった。腎臓がおしまいになるとおしっこが出なくなり、おしっこが出ないと体に水が溜まり、そうすると血液に老廃物が溜まり……とコンボが決まっていき、やがて全身がむくみでパンパンになった水風船人間が完成する。当時の私です。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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自分で血液をきれいにできないので人工透析が必要になる。人工透析というのは腎臓の代わりに機械で血液をろ過する治療。1回何時間もかかる上に、病気によっては週に何回もこれをやらないと死んじゃうみたいなことでも知られる大変なアレだ。

「どうせ1日中寝てるんだから数時間透析をしようがしまいがあんま変わんないんじゃない?」と思う人もいるかもしれない。ところが血を出したり入れたりするだけで人間というのは相当体力を消耗するらしく、同じ寝たきりでも透析をした日はかなりクタクタになった。

また、栄養をとるためには大量輸液をしなければならないが、おしっこが出ないので肺の周りにまで水が溜まってしまい、そうなると自力で呼吸ができないので人工呼吸器も必要になる。あっちを立てればこっちが立たず状態。

写真はイメージです(PhotoAC)
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とにかく膵臓を休ませるために絶飲絶食をして、あとは輸液で栄養を補給しながら自力での回復を待つ、というのが急性膵炎の基本的な治療だ。ただ、重症すぎると自力で回復する前に体の他の部分がダメになっていってしまう。そうすると最悪死ぬ。当時の私です。

死んだら困るので呼吸器や透析機器があるICUで全身管理を行う必要がある。まあそれでも死ぬかもしれんけど、という状況。

ということで入院から3日目の午後、バタバタと転院の手続きが始まった。

2日ぶり3度目の救急車に乗せられる。救急車の中で妻が長年一緒にラジオ配信をやっている相棒のイボーンさんに電話をかけてくれた。あとで妻に聞いたら「自分が話すと泣きそうだったので仲のいい友達としゃべってもらうほうがいいと思った」とのこと。

ヘロヘロの状態ながら多少会話ができ、「なんでICUに入る直前に妻じゃなくおっさんとしゃべってるんだ?」という状況のシュールさにちょっと笑った。

写真はイメージです(PhotoAC)
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ICUにはスマホの持ち込みができないためその場でロックを外して妻に渡した。入院直後からスマホを触る力はほぼ残っていなかったので、必要な連絡などは妻に代行してもらうしかない。ここから数カ月に渡って僕は外部の情報から遮断されることになる。

このときは痛みと苦しみの無間地獄で完全にグロッキーになっており、「なんでもいいから楽にしてくれ」という気持ちだった。そういう意味では大病院に転院になったことはかなりありがたかったといえる。