人から何かしてもらったら、なぜ人はお返しをしたくなる?
互恵性と似た心理現象に「返報性」があります。これは人から何かしてもらったら、こちらもお返しをしたくなる、という心理です。たとえ義理チョコでも、バレンタインデーにチョコレートをもらったら、「何かお返しをしなきゃ」と思う。これが返報性です。
互恵性の場合、前述のとおり、その好意のやりとりに見返りを期待するところがありますが、返報性はもっと自然な心理だといえます。これはサルにも見られる現象との報告もあり、私たちの本能に根ざしたものかもしれません。
ただ、返報性がもたらすのは好意のやりとりだけではなく、敵意を示せば相手も敵意を返してきます。そのほかに「譲歩の返報性」と「自己開示の返報性」もあり、前者はいわゆる譲り合い、後者はこちらが秘密を打ち明けたら相手も同じようになるというものです。
一般に、ビジネスはギブ・アンド・テイクで成り立っていますが、返報性はギブ・アンド・ギブ。これは職場で円滑な人間関係を築くうえで重要なポイントでしょう。
商売においても、たとえば食品売り場で試食サービスを受けたら、つい「ひとつくらい買わないと」と思ってしまう。これも私たちの返報性がなせるものといえます。