経済学では「人は利己的である」と規定していたが…独裁者ゲームが示すもの
人は利己的であるとした従来の経済学に対して、利他的でもあるとするのが行動経済学ですが、それを実証するのが「独裁者ゲーム」と呼ばれるこんな実験です。
お互いに知らない者同士の2人をペアにして、一方のAに1000円を与え、それをもう一方のBとどう分け合ってもよいと伝えて、実験を始めます。
この場合、2人はアカの他人であり、従来の経済学が規定するように人間が真に利己的であるならば、Aは1000円を独り占めにする可能性が高いはずです。
ところが実験の結果、ほとんどのペアは一方が1000円を独り占めすることなく、もうひとりに300円程度を分け与えていたことが判明しました。
これは人間が決して利己的ではなく、私たちには「利他性」がそなわっていることを示しているというわけです。
見返りを求めることなく他人に利益を与えることができる。他人の満足度が上がると自分の幸福感も増す─。
これも社会的選好※のひとつと考えられていますが、なぜそうなるのかというと、人間はそういうふうにできているから、というほかありません。
※人が自身の利益だけでなく他者の幸福や利益を考慮して意思決定をする傾向のこと