共感や感動を呼び起こす内容がストーリー仕立てで書かれている記事

その一方で、「この記事にしかない」という独自要素が書き込まれ、見出しでも独自性を匂わせることができた記事は、その独自要素がたいしたものでない、いわゆる小ネタであっても、多く読まれていた。

④は見出しとサムネイルがよく結びついている記事で、これも当然と言えば当然だと思う。読者は見出しと1枚の写真から、記事本文を開いて読むかどうかを判断している。

考えるべきは、どういう写真であればいいのか、という点だと思うが、正直に言ってこれは簡単には断言できないと思った。傾向としては人の写真、しかも被写体が小さくないほうが読まれていた。たとえば顔または胸より上が写っている場合が多かった。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
写真はイメージです 写真/Shutterstock

⑤はYahoo!やX特有の現象と言えるかもしれない。読者のコメントが次々に付いて盛り上がる記事を指している。面白いと思ったのは、記事が扱っているメインテーマではなく、記事中にちょっと出てくるだけの話題や、記事になくても読者が連想した話題をめぐって、書かれている内容そっちのけで読者が盛り上がり、コメントがコメントを呼ぶ形で結果としてPVが伸びたケースもあったことだ。

この5要素のうち、特に重要なのが①と②だった。つまり、共感や感動を呼び起こす内容がストーリー仕立てで書かれている記事はとにかくよく読まれている。加えて、サムネイルで使われている写真が、多少横を向いた登場人物のアップになっていると、より共感を得られやすくなることも分かってきた。

ところで、「共感」は、考えてみればデジタルコンテンツを扱う人の間ではよく出てくる言葉で、重要なキーワードと言える。ただ、私は少なくともこの分析の時まで、恥ずかしながらその大切さに気付いていなかった。

読者の共感を得ようと思えば、記事に書かれている内容を読者に追体験してもらい、感情移入してもらいやすくするのが手っ取り早い。構成をストーリー仕立てにすることで、記事の登場人物に起きたことが、まるで読者自身が体験したことのように感じてもらえるようになる。