「頭使わないといけない」
試しに、「ロシアがウクライナに攻め込んだことも知らないの?」と尋ねると、それはみんな「知っている」と言う。さすがにそれは知っているのか。では、そのニュースはどうやって知ったのかと重ねて聞いてみた。すると、一人はしばらく沈黙した上で「TikTokとかで解説されているし、それで知ったのかな」。
別の一人は「投資とか金融には関心があってYouTubeでテレビ東京の番組を見ていて、そこで取り上げられていたから知っている」。
さらに別の一人は「SmartNewsで見たと思う」と話した。ニュースプラットフォームは見ていなかったのでは? と突っ込むと「アプリのクーポンを開いた時に目に飛び込んでくる」と言われた。
3人に共通するのは、「文章として記事を読むことはほぼしていない」という点だ。そこで47リポーターズのうちPV数が少なかった記事を試しに読んでもらい、感想を聞いてみるとこんな答えが返ってきた。
「長文は苦痛だけど、頑張れば読める。でもこの記事は読みづらい」
「分かりにくくて、読む気にならない」
「難しい」
具体的にどこが難しいのかを聞くと、3人とも共通していた。
「最初の部分」
この言葉を聞いて、率直に驚いた。彼らが言う「最初」とはつまり記事の冒頭部分だ。読んでもらった記事の冒頭には、重要な要素が簡潔にまとまった内容が入っている。新聞的な逆三角形スタイルだ。そのリードが、分かりにくいと言われている。まさか、と思った。
そこで「何がどう分かりにくいのか、もう少し具体的に教えてほしい」と頼んだ。すると一人は、このように言語化してくれた。
「なんていうか、初っぱなから情報量とか固有名詞が多すぎて、頭使わないといけないというか、疲れる」
ショックだった。新聞スタイルが正面から否定されている。子どもの頃から新聞を読んでこなかった人にとって、逆三角形は読みにくいということなのだろうか。そんなことを言われたのはこの時が初めてだったこともあり、「本当だろうか」と懐疑的だった。
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