「頭使わないといけない」

試しに、「ロシアがウクライナに攻め込んだことも知らないの?」と尋ねると、それはみんな「知っている」と言う。さすがにそれは知っているのか。では、そのニュースはどうやって知ったのかと重ねて聞いてみた。すると、一人はしばらく沈黙した上で「TikTokとかで解説されているし、それで知ったのかな」。

別の一人は「投資とか金融には関心があってYouTubeでテレビ東京の番組を見ていて、そこで取り上げられていたから知っている」。

さらに別の一人は「SmartNewsで見たと思う」と話した。ニュースプラットフォームは見ていなかったのでは? と突っ込むと「アプリのクーポンを開いた時に目に飛び込んでくる」と言われた。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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3人に共通するのは、「文章として記事を読むことはほぼしていない」という点だ。そこで47リポーターズのうちPV数が少なかった記事を試しに読んでもらい、感想を聞いてみるとこんな答えが返ってきた。

「長文は苦痛だけど、頑張れば読める。でもこの記事は読みづらい」

「分かりにくくて、読む気にならない」

「難しい」

具体的にどこが難しいのかを聞くと、3人とも共通していた。

「最初の部分」

この言葉を聞いて、率直に驚いた。彼らが言う「最初」とはつまり記事の冒頭部分だ。読んでもらった記事の冒頭には、重要な要素が簡潔にまとまった内容が入っている。新聞的な逆三角形スタイルだ。そのリードが、分かりにくいと言われている。まさか、と思った。

そこで「何がどう分かりにくいのか、もう少し具体的に教えてほしい」と頼んだ。すると一人は、このように言語化してくれた。

「なんていうか、初っぱなから情報量とか固有名詞が多すぎて、頭使わないといけないというか、疲れる」

ショックだった。新聞スタイルが正面から否定されている。子どもの頃から新聞を読んでこなかった人にとって、逆三角形は読みにくいということなのだろうか。そんなことを言われたのはこの時が初めてだったこともあり、「本当だろうか」と懐疑的だった。

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新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと
斉藤 友彦
新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと
2025年2月17日発売
990円(税込)
新書判/240ページ
ISBN: 978-4-08-721350-8

共同通信社が配信するウェブ「47NEWS」でオンライン記事を作成し、これまで300万以上のPVを数々叩き出してきた著者が、アナログの紙面とはまったく異なるデジタル時代の文章術を指南する。
これは報道記者だけではなく、オンラインで文章を発表するあらゆる書き手にとって有用なノウハウであり、記事事例をふんだんに使って解説する。
また、これまでの試行錯誤と結果を出していくプロセスを伝えながら、ネット時代における新聞をはじめとしたジャーナリズムの生き残り方までを考察していく一冊。

◆目次◆
第1章 新聞が「最も優れた書き方」と信じていた記者時代
第2章 新聞スタイルの限界
第3章 デジタル記事の書き方
第4章 説明文からストーリーへ――読者が変われば伝え方も変わる
第5章 メディア離れが進むと社会はどうなる?

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